2011年10月03日

あの子のこと

どうしようもなく、あの子のことが頭から離れないので、昔の日記を引っ張り出してきた。

軽く失踪してたあの子がボロボロになって実家に連れ戻されて、久しぶりに連絡がきたのが、9月の終わりだったようだ。
それから翌年3月のあの子の自殺までの、半年。

弔問に行った日の日記を見たら


毎日のように語り合った2年間と、正直に言えば苦しめられた3年間に花をそなえて、僕は僕の中の彼女を埋葬する。


って書いてた。正直だな。

あの子の誕生日も命日も覚えてないけれど、確か天秤座だったと思う。
風の星座同士だから、相性がいいんだよ、って言った声を覚えてるから、多分そう。

私に占いを教えてくれたのは、っていうか占ってくれたのはあの子だった。
だからか、今でも私はあの子の言葉にけっこう縛られている。

私があの子に惚れ込んだのは、2人で家飲みしてて、お酒に弱い私は半分コタツに突っ伏していて、何かの拍子に「ワタシはキミを利用しようと思って近づいたんだよ」って言われた時。

なんつうか、実生活であんまり聞ける台詞じゃない。
芝居がかってて、ドラマチックで、そんなの私も大好きだった。
あの子はどうしようもない恋をしてて、そのためなら何でもできる子。

私は自分がどうこうなるよりも、恋に焦がれるあの子を見てる方がずっと良かったから。

それからシンミツな夜を何回も何回も一緒に過ごして、三角関係に果敢に乗り込むあの子についていって巻き込まれて、悪いことも2人でいっぱいして、楽しみも痛みも分け合った、気がする。

今残ってるあの子の記憶はすごくおぼろげなんだ。

でも、身体に触れられるのを凄く嫌がったあの子が、誰かに触れるのを凄く怖がっていた私に預けた身体の重みとか、背中に感じた指先とか、ひっかかれたこととか、あの子が私を呼ぶ声とか、そういう感覚は不思議と覚えてる、ような気がする。

ん、触った覚えはないが、触られた記憶は意外とあるな……。

色々とのっぴきならないことになった時に、首を絞められるかと思ったこととか。
あれは夢か現実だったかよくわかんないけど。

弔問には、あの子と凄まじい三角関係を演じて、多分あの子を本気で憎んだ女の子と2人で行くことになった。
愛した私と、憎んだ彼女って取り合わせもなかなか良かったね。

その日のことは、くだらないことまでくっきり覚えてるなあ。
日本海側の小さな駅にたどり着いた時の心細い気持ち。
仕事の都合で日帰りしないといけなくて、夜電車を乗り換える時に注文したうまくもないカレーを、寒さに震えながら食べたこと。
喫煙席に座って2人とも黙って煙草をばかばか吸ってたこととか。
その時点で、相当壊れてた彼女が、「次に死ぬのは私だね」って言うから、甘ぁ〜い気持ちになって「そうだね」って頷いたこととか。
そして、その次は私、とは口に出さなかったことも。

まーしぶとくお互いまだ生きてる。

ていうか、その時にちゃんと連絡先とかもらって、お墓がどこになるか聞けばよかったんだよね。
そうすれば墓参りとかして自己満足に浸れるのに。
どっち向いて祈ればいいかすらわかんない。
そもそも死んだ人のために祈ったりもしないけど。

社会人になってから行った旅先で、トモダチにあげるにはちょっと高価な石の指輪を買ってあの子に送ったんだ。
遺品の中になかったから、多分最期の時に、つけてくれてたんだろう。
大事なときに、その色を身につけるってのは、よく知ってたから。
その思い込みだけが、あの子が私に残してくれたもの。

あの子にとって私は何だったのか、とたまに思うけど、すぐに答えは出る。
あの子は私のことを、太陽だって言ったから。多分そうだったんだろう。

でも、最後に「ワタシの気持ちはどこに行ったらいい?」と聞かれたとき、死に物狂いで「うちに来い」って言った言葉は、結局届かなかった。
半年でもう私もぼろぼろだった。仕事しながら毎日の深夜の電話は苦痛で綱渡りだったけど、毎晩受話器を取るたびに奮い起こした勇気は嘘じゃなかったと思う。
でも一方で電話じゃもうどうにもならないのも分かってて、指先ひとつでこの子は死ぬなってのももう分かってて、あの瞬間に逆に明日会いに行く、会おうって言ったら結果は変わってたんだろうか。

私はあの半年に、あの子の手をつかみ損ねた。
違う、私があの子の手をつかめるなんて、一瞬でも夢見るべきじゃなかったんだ。
不甲斐ない、不甲斐ないねえ。

現実と夢の境が曖昧になる時があって、その時には夢の中でも真剣になれる。
だったら今この時が、現実なのか夢なのかなんて、分からないじゃないか。

当時こんなこと日記に書いてた。
そだねー。けれど、真剣になるべき時を、相手を、徹底的に間違えてしまったんだ。
posted by すずる at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 戯言
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