2017年07月03日

4〜6月に読んだ本

毎年7月に入るたびに、なんもしてないのに今年も半分過ぎてしまったっていう焦燥感があって今年も例外ではない。ほんと何をしてたんだろ。

4月から6月の間に読んだ本は8冊でした。読んだ順に

『百匹の踊る猫』 浅暮三文
『たべるのがおそい vol.2』
『完本酔郷譚』 倉橋由美子
『MONKEYvol.11 ともだちがいない!』
『TOUR1989』 中島京子
『夜の夢見の川』 アンソロジー
『停電の夜に』 ジュンパ・ラヒリ
『針がとぶ』 吉田篤弘

以下は印象に残った本のことをちょっとずつ。


『たべるのがおそい vol.2』

この特集の石川美南と宮内悠介の共作というのに興味を持って買った。印象的な、イメージの喚起力が強い歌とそれにまつわる異国の物語、とても良かった。
あと森見登美彦の短編が良かった。贅沢いうようだけどこういうのを定期的に読みたい。巻頭の金原瑞人を読んだら紹介されてた短歌を読みたくなった。
ムックだと知らない作家さんも読めるからけっこういいな。


『完本酔郷譚』 倉橋由美子

美青年がお酒を飲んで異郷に遊ぶ話、屏風絵の世界に入っていくような。味読に足りる文章で1編ごとにお腹いっぱいになるので少しずつ楽しんで読んだ。
お酒と共に女性が出てきてまあ必ずそういうことになるんだけど、エロいのかな、エロくないのかな、よくわからないあんまり経験ない読み心地。
しかし慧君の取り返しのつかない毒でもひとまず味わってみる姿勢には恐れ入る。


『MONKEYvol.11 ともだちがいない!』

巻頭は谷川俊太郎。ともだちがいない、いらない、亡い、ちっちゃい子から若い子から年寄りまで、性別年齢様々。ひとつひとつはさらっと読んでしまう断片だけど、読んでて気づくと猛烈に自分のことを考え語り出したくなっている。今まで、現在、これから。そういうふうに動かされる力がある言葉。
エミリー・ミッチェルの短編2つが特によかった。SFのショートショートみたいな着想が、こまやかなディテールの描写ですんなりリアリティをもって頭に入ってくる。むちゃくちゃうまい。
ラストが登場人物にとってハッピーエンドなのかバッドエンドなのか迷ってしまうような、なんか読み手の価値観が試される。
あとウィリアム・バロウズの「ジャンキーのクリスマス」も好き。


『停電の夜に』ジュンパ・ラヒリ

短編集。毎日決まった時間、夕食時にくる計画停電。すれ違いの多くなった夫婦がろうそくを点し、ひとつずつ秘密を告白し合う表題作。どう転ぶんだろうっていう先の読めない話の筋にも引っ張られるんだけど、描写の細やかさがなんといってもすごい。起きた出来事を外側から見たら、あー倦怠期ね、はいはいって簡単にラベリングしちゃうようなもんだけど、ラベリングしちゃうことでずいぶん繊細な機微を見逃してるんだと思わされた。
作者はインド系アメリカ人ってことで、アメリカにいるインド人、インド系の二世なんかの描写も面白かった。
どれが好みかなあと思うとまあ「三度目で最後の大陸」ってことになるかもしれないけど、登場人物に同調できない、感情移入しづらい話も普通だったらあまり好きじゃないってなるけどこの作者の短編だとなんか読まされるし、どれも粒ぞろい。


『針がとぶ』 吉田篤弘

短編集。今はもういない詩人の記憶を守る姪の話から始まって、なんとなしに読んでいたら、だんだんと引っかかりを覚えてきて、短編同士がどこかで繋がってる確信を持ってからは俄然引き込まれて面白く読んだ。
解説で小川洋子さんがあそこって書いてたけど、私は断然「路地裏の猿」のあの部分だなあ、と人によってそれぞれ刺さる場所が違うのがいい。
作中に出てくるなんでもあるような品数の多い雑貨屋さんで目に留まるものが人によってそれぞれ違うように。
短編として1つ選ぶなら、画家が辺鄙な半島の村でなんでも扱ってる雑貨屋と出会う「パスパルトゥ」が好き。
posted by すずる at 20:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書メモ

2017年04月13日

3月に読んだ本

3月に読んだ本は4冊でした。むちゃくちゃいい本ばかりだった。



『応仁の乱』 呉座勇一

これを読めば応仁の乱がばっちり分かるという評判を見かけて買って読んでみた。
興福寺の2人のお坊さんの日記の記述を丹念に追いながら、どこで誰が策動してて、誰と誰がどういう関係で……と適切に説明してくれる。
わりと淡々と書かれているのに、出てくる人物のリアルな人間くささが飽きさせず、大乱に至る臨場感があって読むのがやめられなくなる。
読んでいると、すごくこれ細かいところでいろいろ語りたくてしょうがなくなるので、しばらくの間、誰かれ構わず「それでその時筒井がさあー」とか喋る迷惑な人になっていた。

あと個人的に、奈良博の醍醐寺展で学んだ満済准后の知識と結びついてよかった。



『闇の奥』 コンラッド

植民地時代のアフリカ。読んでてジャック・ロンドンのアラスカの話を読んだ時と同じように、その時代、その場所の空気を吸いその目で見て経験してきた人の書く描写の強みというものを感じた。
どこか狂熱があり、どこか倦んでいる、この一攫千金かなんかよくわからないものを夢見てヨーロッパから遠くアフリカまで行った人々の空気を、コンラッド以上に濃く深く描写するのは誰にとっても不可能だろうなーと思うほどに。
謎めいた人物がいて、彼に会いに川を遡っていくときの描写がすごくいいんだよなー。

チュツオーラの描くドラムも、コンラッドの描写するドラムも、翻訳されて日本語で読めるっていうのは豊かなことだよな。岩波文庫好き。



『ティンブクトゥ』 ポール・オースター

死期を悟ったホームレス詩人が、最後の願いを叶えるために愛犬と旅に出る、そんなもう導入でこんなのに弱いとわかりきっていた。
もしかしたら天才だったのかもしれない詩人と犬の交流から、アメリカというものが浮かび上がってくる。
すごい良かったというのと、すごいやるせない読後感が同時にあった。

あと息抜きに、松尾由美の『ニャン氏の事件簿』読みました。
posted by すずる at 16:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書メモ

2017年03月05日

2月に読んだ本

2月に読んだ本は5冊でした。



初川端康成。『掌の小説』を買っておいたと思ったのに見当たらなくて、そういえば文豪怪談持ってたなーと思い出してこっちを探し出した。
しみじみと胸を打たれるような文章があちこちにあって、あーなんかもっと早く出会って読んでいればよかったと思った。高校生の頃とか絶対好きだったこんなの。
少女の頃に読んでおいて、血肉にして、これが思考や文章やなんやかんやのベースになってればよかった。
好きな短編がいろいろある、「白い満月」、「不死」、「地獄」、「離合」が好きだなー。
「薔薇の幽霊」は、自分がいつか百合アンソロを編む時が来たら入れる。



紀伊国屋に行った時にアメトークの読書芸人コーナーがあって、そこに2号が置いてあったので気になったムック。まだ2号までしか出てないなら余裕で追いつけるだろうと思って1号から買ってみた。
円城塔「バベル・タワー」、イ・シンジョ「コーリング・ユー」、西崎憲「日本のランチあるいは田舎の魔女」が面白かった。短歌はあまりわかんなかった。



柴田元幸と高橋源一郎の対談で、ブコウスキーは友達がいないからスラングがないっていうくだりがとても印象に残ってて、柴田元幸訳のちくま文庫版が出たので買って読んでみた。
私立探偵ものの体裁なので、あまりにもあれな探偵にだいじょうぶかなこの人とハラハラしながら読んでしまってあとでぽかーんとしたけど、読んだ後に残るのはたしかに孤独。



最近けっこう面白い変な本を訳してる翻訳者さんがいるらしいと聞いて、気になってた方の本。
なんか文学論みたいな本なのかなーと思ったら、もっとエッセイっぽかった。案外ふわふわしている。



小説は実は1冊も読んだことないんだけど、エッセイとか翻訳は何冊か読んでます。彼が何かについて語るのを読むのが好き。
で、どこかで文章のうまい作家の話をしていて、くわしくはこの本に書いてあるっていうので買ってみた。
私は本は読むんだけど、文章がうまいということがよく分からなくて、読みやすいかどうかくらいしかないし、例えば名文家とか言われてもあんまり思い浮かばない。で、作家がうまい文章っていうのはどんな文章だろうって興味を持ったのでした。
取り上げられてる作家は吉行淳之介、小島信夫、安岡章太郎、庄野潤三、丸谷才一、長谷川四郎。この中では吉行と丸谷しか読んだことない。
彼の書き手としての読み方が出ていて、短編の構造、文章、特にそれを彫琢すること、それから系統立てた読書によって作家がどこから来て、どこへいくのか。
これだけ丁寧に短編を解体しながら、なおかつ興味をそそる、読んでみたくなる語り方ができるっていうのがすごいと思います。

結局文章がうまいということはよく分からなかった。プロの作家なら文章をうまく書くというのは当たり前のことで、むしろそうでない部分に著者は惹きつけられているみたい。
posted by すずる at 22:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書メモ

2017年02月05日

1月に読んだ本

1月に読んだ本は5冊でした。

『冬の夜ひとりの旅人が』



大晦日から新年にかけて読んでいた。
イタロ・カルヴィーノの新刊冬の夜ひとりの旅人がは、結局読めなかった。いや読んだのか。
私はあなたであり、男性で、女性で、読者で、作者で、読んでたと思ったら自分が読まれていて、と思ったら書かれていた。
小説を読みかけては続きの気になるところで行く先をなくしてしまう、たぶんこういう実験的な作品が好きなんだろう、これはまさに私みたいなのが好きなやつだと思いつつも、読んでいる間は大変にもどかしい本だった。

『二人のウィリング』



シリーズ探偵役のウィリングがタバコ屋で男と出会うところから、最初の死体までの導入がめっちゃ面白い。
中盤は発端と比べると読んでてあまり起伏がないように感じたけど、真相が分かってみると世界が一変して、何げない描写だったのが、読み返したら全然違う感想になりそうと感じた。再読したときにより楽しめそう。


『舟を編む』



映画で見た『まほろ駅前〜』で気になってた三浦しをんをやっと初読み。
雲田はる子の漫画化が始まったので、それを読む前に原作を読んでおこうと思って。
で、すごく良かった。ちょうどOEDを作った人たちの話を読んだばかりというのもあるけど、辞書作りの世界にすんなり入れた。
特に西岡さん視点のところが良くて、時間もコストもかかる大きなプロジェクトとそれを達成するためにいるような人たち、辞書に名前を残す人たちを、自分とは違う、けれどと思いながら周辺から見ている人物。

『漱石入門』



今年は漱石生誕150周年なんだそう。グラフロの紀伊国屋に行ったら漱石特集のコーナーがあって、そこでふらっと買ってみた。
この著者の本を読むのは2冊目だけど、初心者向きに紹介してくれる単なる入門書じゃない。もっと読み方そのものが変わってしまうような、こんな深い読み方ができるんだって目からウロコがぽろぽろ落ちるような読書体験を与えてくれる。
なんかもうちょっと違うふさわしいタイトルがあると思うんだけど…。
「文化記号は、小説を風化させる作用と小説を生かし続ける作用の両面を持つ」
書かれた時代と背景を知ると、自分の中に作品を読む新しい視点が持てるということ。
ならば、文化記号を理解するに越したことはない、うん。
特に明治の家族制度のところが面白かった。

あと西澤保彦の『悪魔を憐れむ』読みました。タックシリーズ久しぶりすぎた。
posted by すずる at 23:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書メモ

2017年01月19日

2016年に読んだ本

2016年に読んだ本、24冊でした。家族に「少なっ」と二度見された。
この数でベストとかいうのもなんですが、読んだ本はどれもこれも当たりだった気がする。

『ハザール事典』 ミロラド・パヴィチ
『冬の物語』 イサク・ディネセン
『日の名残り』 カズオ・イシグロ

あたりが特によかった。
『ハザール事典』にはかなり時間をかけた。
理解が及ばないとこもあったけど、見覚えのある人物の断片が出てくるたびにぞくぞくする興奮があった。すごくいっぱいメモしながら読んでた。
イサク・ディネセンを冬の終わりから春にかけて読んだのもすごいいい読書だった。
フォークロアっぽいけど、民話の登場人物みたいに枯れてない、それから話がどう転がっていくかいつでも未知数。
『日の名残り』はものすごく複雑な読後感だった。徹底して滑稽でもある、残酷なほど滑稽。悲しい。人生と思想を賭けて誇り高く勤めてきた人が、その人生に疑問を抱かざるを得ない状況が。それでいて記憶の中のミス・ケントンはいきいきしててかわいい。描かれる風景は美しかった。


以下は読んだ本を読んだ順に。
『文学会議』 セサル・アイラ
『最果てアーケード』 小川洋子
『注文の多い注文書』 小川洋子、クラフト・エヴィング商會
『ジェゼベルの死』 クリスチアナ・ブランド
『ブラバン』 津原泰水
『ハザール事典』 ミロラド・パヴィチ
『フィッシュストーリー』 伊坂幸太郎
『LOVE』 古川日出男
『冬の物語』 イサク・ディネセン
『日の名残り』 カズオ・イシグロ
『MONKEY vol.8』
『ハートブレイク・レストランふたたび』 松尾由美
『ジム・スマイリーの跳び蛙』 マーク・トウェイン
『MONKEY vol.9』
『拳闘士の休息』 トム・ジョーンズ
『静かな炎天』 若竹七海
『スペース金融道』 宮内悠介
『MONKEY vol.10』
『エスカルゴ兄弟』 津原泰水
『夜行』 森見登美彦
『博士と狂人』 サイモン・ウィンチェスター
『いまさら翼といわれても』 米澤穂信
『首折り男のための協奏曲』 伊坂幸太郎
『ヒッキーヒッキーシェイク』 津原泰水
posted by すずる at 22:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書メモ