2014年08月07日

7月に読んだ本

7月に読んだ本は5冊でした。

『対岸』 フリオ・コルタサル
『SFマガジン700 国内篇』 ハヤカワ文庫
『御子柴くんの甘味と捜査』 若竹七海 中公文庫
『読まずにいられぬ名短篇』 北村薫、宮部みゆき編 ちくま文庫
『教えたくなる名短篇』 北村薫、宮部みゆき編 ちくま文庫

フリオ・コルタサルの『対岸』は、最初はあんまりぴんとこなかったけど、短編全部読んで、短編小説の書き方についての講演録読んで、訳者あとがき読んで、献辞を見返したら、あーこれっていい本だなーとしみじみきた。
奇妙な短編揃いだけど、「転居」と手フェチ的に「手の休憩所」が好みかなー。
「転居」の、日々のつまんない仕事から帰ってきたら、家族と家の様子に少しずつ違和感を覚えて、それが膨れ上がっていって、どこかで境界を踏み越えてしまい、そしてあの結末に到達するのがじつに…いい…。
職場でも家でもやることが決まりきってる日々の中で、ふと違和感を覚える感じ。まったく同じ毎日のはずが、実はまったく覚えのない状況(家も家族も)に気がついてしまった、みたいな。この描写好き。

SFマガジンの700号記念アンソロジーは国内篇から読み始めてみた。
SF素人にはわりとマニア向けに思える。エッセイとか、早川の雑誌で堂々と創元SF派って言っちゃうノリとか、SFファンのうちわ向けのあの独特な感じがよく出ていた。
筒井康隆「上下左右」、円城塔「Four Seasons 3.25」がよかった。

『御子柴くんの甘味と捜査』は、『プレゼント』の登場人物が出てくる、けどすっかり忘れてても問題なく読める。(大昔に読んで面白かった記憶はぼんやりある)
御子柴くんが甘味に振り回されつつ捜査した事件が、最後に小林警部補の一言で様相が変わって…ってこのスタイル、すごく若竹さんの短編に合ってる。
玉森さんはいいツンデレですね。
しかし若竹七海の新刊短編集が2冊も読めるなんて、今年は何かが起こる!

ちくま文庫の北村薫、宮部みゆき編のアンソロジーは5、6冊目。
北村薫さんの『自分だけの一冊』っていうアンソロジー作りの醍醐味を語った講座を読んだ後だから、こういう意図で編まれたのかなーとか考えて、1回で2度おいしい。
『読まずにいられぬ名短篇』はもやーもやーとするいい厭な話が多かったので厭な話スキーの方にお勧めしたい。序盤の動物かわいー♡みたいなのに騙されてはいけない。
田中小実昌の「からっぽ」がわけわかんなすぎて凄かった。戦後すぐ米軍基地でタイピストとして働き始めた女の子が女子トイレがなくて困ってて、最終的に処女がお神輿担がれてワッショーイってなるナニコレおもしろい。
米兵さんも人夫として働く日本人も、だんだん女の子1人を中心に記号から個性のある血の通った人間になってって、処女を担いでハレが始まる、ぎりぎりエロくならずに。
女の子が性的な生贄っぽくも巫女さんっぽくも見えるんだなー。このバランスすばらしい。
共感と感情移入から始まったアンソロジーもジャック・ロンドンと尾崎士郎に至って、だいぶ遠い所に連れて来られた感。
「まん丸顔」の圧倒的な非共感?  語り手にビッグな罰が当たりますようにとつい願ってしまうような。読者の想像力が試される肉体的な極北「焚き火」と精神的な極北「蜜柑の皮」…小さな出来事が生死を分ける零下75度の極寒の世界の描写がこれでもかって続くジャック・ロンドン「焚き火」と、大逆事件の死刑執行当日、無実かもしれない人々が次々と死刑執行される直前を共に過ごした教誨師の語る尾崎士郎「蜜柑の皮」。
死がこのうえなく近づいてくる。
あとは吉田直哉「百足殺せし女の話(抄)」に寺山修司が出てくるけど、やっぱ言葉がいちいち強いなーとか、松本清張の「張込み」とそれを倉本聰が捕物帳にしたシナリオ「武州糸くり唄」が並んでて、読み比べて、うわあ…これ贅沢…ていうか清張の短編いいな!って改めて思った。

『教えたくなる名短篇』の方は、ヘンリー・ジェイムズはじめよく分からん短編が多くて、あと巻末対談読んでも納得のいかない発言があってもやもやしながら読んでたけど、長谷川修「舞踏会の手帖」が素晴らしすぎた。
回想がぽんぽん飛躍するのにシーンの繋ぎ方が自然で美しい。私小説っぽいのに幻想的な風景が混じってくるのがいい。
何故こんなに惹かれるのかっていうと、「死者を巡る旅」だからなのかなー。その中に少年期、青年期の友情とか父、戦争、故郷の記憶とか老年期の境涯とか含まれて中身がすごく豊か。一生のうちに1つでもこんな短編が書けるんなら、芥川賞とか取れんくても別にええやん…ってそんなわけにもいかんか。
もう1つ入ってた歴史ものも、どこまでが史実でどこまでが空想の飛躍なのか曖昧なのがとても好みだったので、長谷川修は改めて著作を探して読んでみたい。
あとはメモ。ターヒューン「青い手紙」読んだらなんっか最近こんなん読んだ覚えあったなーと思ったら、『怪奇小説日和』に入ってた「ボルドー行きの乗合馬車」だ。フランスの実話だったのかねー。
『謎の物語』探せたらモフェット「謎のカード」読んでみよう。

8月は例年あまり読書が進まなくて、ぼーっと歌集をめくっては寝落ちしてるけど、今年はさくさく積んだ本を読みたい。
posted by すずる at 16:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書メモ

2014年07月21日

6月に読んだ本、と最近買った本

うっかりするとメモすら忘れて1ヶ月近く経ってしまうな。

6月に読んだ本は

『怪奇小説日和』 西崎憲編 ちくま文庫
『たまさか人形堂それから』 津原泰水 文藝春秋

の2冊でした。
怪奇小説は、ジョーン・エイケン「マーマレードの酒」、トマス・バーク「がらんどうの男」、アン・ブリッジ「遭難」が好き。ベリズフォード「喉切り農場」はブラックユーモアにも取れて、思わず笑ってしまった。
1編だけ載ってた倉阪鬼一郎さんの訳文やっぱ好きだなあ。
たまさか人形堂はシリーズ2冊め。
津原さんの文章は、芸術とか音楽とか人に情動を起こさせる何かの描写が、具体的でわかりやすくて好き。だから人形に人が魅入られる瞬間、魂がもってかれる瞬間に説得力がある。
ばーちゃんと孫の交流が楽しい「髪が伸びる」、冨永くんの葛藤が描かれる「ピロシキ日和」が好き。

漫画の方は『僕だけがいない街』の1〜4巻を。
タイムリープもの? で、過去の連続誘拐殺人事件を未然に防ぐために行動したり、現在の殺人事件では真犯人に陥れられて逃げることになったりと、どっちの時間に飛んでも緊張感があってけっこう面白いです。続きが楽しみ。

あとついったーの方で、2014年上半期ベストのタグがまわってたんで、読書量少ないですけど一応参加。

『戦闘妖精・雪風(改)』 神林長平
『ゆめこ縮緬』 皆川博子
『読み解かれるD』 津原泰水
『スペシャリストの帽子』 ケリー・リンク
『第三の警官』 フラン・オブライエン
『ゴーレム』 グスタフ・マイリンク

という感じです。

最近というか6、7月に入って買った本は、
『MONKEY vol.3』 スイッチパブリッシング
『予期せぬ結末3』 ロバート・ブロック 扶桑社ミステリー
『師事』 ウニ 双葉社
『4つの顔』 ウニ 双葉社
『教えたくなる名短篇』 北村薫、宮部みゆき編 ちくま文庫
『御子柴くんの甘味と捜査』 若竹七海 中公文庫
『小澤征爾さんと、音楽について話をする』 小澤征爾、村上春樹 新潮文庫
『日の名残り』 カズオ・イシグロ ハヤカワepi文庫
『可愛い黒い幽霊』 宮沢賢治 平凡社ライブラリー
『月の部屋で会いましょう』 レイ・ヴクサヴィッチ 東京創元社
『蜂に魅かれた容疑者』 大倉崇裕 東京創元社
『少女キネマ』 一肇 角川書店
『御子を抱く』 石持浅海 河出書房新社
『憎悪のパレード』 石田衣良 文藝春秋
『悟浄出立』 万城目学 新潮社

師匠シリーズ買いましたよ!
まだ何か買ってる気もするけどこんなもので。
タグ:買った本
posted by すずる at 19:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書メモ

2014年06月13日

5月に読んだ本

5月に読んだ本は3冊でした。

『ゴーレム』 グスタフ・マイリンク 白水Uブックス
『本にだって雄と雌があります』 小田雅久仁 新潮社
『鐘楼の蝙蝠』 E・C・R・ロラック 創元推理文庫

先の2冊を4月から読んでたんだけど、かなり時間がかかった。

『ゴーレム』はプラハが舞台で、ゲットーの薄暗がりを歩く主人公の幻想的な短編集かと思ったら、長編だった。
章ごとにけっこう山場と引きがあって、雑誌かなんかで連載してたのかと思うくらい……最初の方は完成された短編を読んでるような感じでした。また挿画がすごくいいんだ。
主人公に寄り添って体験する奇妙で霊的な出来事、それに芸術家が集まって変わった話をしたり、いかがわしいお店に迷い込んだり、アンダーグラウンドな感じが居心地が良くて、もうプラハのユダヤ人街から脱出できなくなるかと思った。

読んでて不思議な感触がする、数人で集まって談笑してるのに、なんだか1人多かったような感じ。ここにもう1人いる、みたいな。

『本にだって〜』は語りは読んでて思わずげっへへと笑ってしまうくらい面白くて、でも話はいつんなったら本題に入るんだってくらいのらりくらりとしてて、読んでる瞬間は楽しいけど先が気になるような展開がないから、なかなか読み進まなかった。
文章は面白いんだけどな。

気分的に余裕がなくって、読書はちょっと停滞中……。
posted by すずる at 21:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書メモ

2014年05月02日

4月に読んだ本メモ

4月に読んだ本は2冊でした。

『ユニヴァーサル野球協会』 ロバート・クーヴァー 白水社Uブックス
『暗い越流』 若竹七海 光文社

2冊読んだところまでは順調だったけど、その後並行して読み始めた2冊がずっと読み終わらなくて5月に突入してしまった。

『ユニヴァーサル野球協会』は、野球ゲームにのめり込む中年男の話。
熱狂的に語られる野球の試合が、次第に主人公が入念にルールを作り上げ、主人公が振るサイコロに支配された世界ということが分かり、そして現実とゲームの境が曖昧になってくる。
手法として、現実がゲームで語られるというか。
そして、冴えない主人公が次第に神に見えてくる。これは神と世界の話だと。
神はジョークが好き。神はサイコロの前に無力。神はイカれてる。
そして、神は小狡い。

『暗い越流』は若竹さん久しぶりの新刊が出たのが嬉しくて嬉しくて、いそいそとファミレスに行ってちょうどパンケーキ気分だったから春のイチゴのなんとかいうのを注文して「蠅男」を読み始めたのですごくタイムリーだった……。
たとえば喫茶店でレモン味の水が出てくると、葉村晶はこれが嫌いなんだよなーとかつい思い出してしまうように、これまた記憶に残りそうだなー。
葉村晶もの2編、ノンシリーズ2編の短編集。
相変わらずミステリとして着地した後に「何かがある」短編揃いで、もともと若竹さんは最後の一撃というかラストにこだわりがある作家さんだと思ってたけど、奇妙な味といってもいいような味を醸し出してて、どの短編も良かった。
しかし葉村さんがそんなことになってる設定もあったとはな〜。
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2014年04月01日

3月に読んだ本

3月に読んだ本は9冊でした。

『オチケン探偵の事件簿』 大倉崇裕 PHP研究所
『MONKEY vol.2』 スイッチ・パブリッシング
『シュークリーム・パニック 生』 倉知淳 講談社ノベルス
『シュークリーム・パニック W』 倉知淳 講談社ノベルス
『予期せぬ結末2 トロイメライ』 チャールズ・ボーモント 扶桑社ミステリー
『ぶたぶたのお医者さん』 矢崎存美 光文社文庫
『NOVA 5』 大森望編 河出文庫
『幽女の如き怨むもの』 三津田信三 原書房
『半七捕物帳 5』 岡本綺堂 光文社文庫

たくさん読んだわりに印象に残るものは少なかった。

オチケン探偵は話の大筋は楽しいんですけど、細かいところが気になってしまって…大学の先輩が1年生の新入部員によってたかって飲み代とか万単位のお金払わせるのってどうなのっていうかわりと私の中でアウトなので、そういうところで嫌な気分になってしまうのはもったいない……けどしょうがない。

『NOVA 5』はスペース金融道が面白かった。

三津田さんは地方の遊郭が舞台の刀城シリーズ。うーん、花魁の手記とか一人称はもっと生々しくて怖ろしいものを読んだことがあるから物足りないっていうか、一人称の手記なのに描写が客観的すぎてのめり込めない感じ。シリーズの他の作品に比べるといまいちだった。

半七は御一新が近づいて慌ただしい江戸の、なんだかやりきれないような悪人の事件が出てきて、明治になって過去の話として語られてるんだけど、世も末だねえっていう独特の雰囲気になってきた。
そういえば、泡坂妻夫の宝引の辰も最後の方はこんな雰囲気だった気がするなあ。半七を読み終わったら、宝引の辰を読み返してみよ。
posted by すずる at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書メモ