2016年11月30日

拳闘士の休息

15年前の今頃の日記をふと読んだら、「そろそろ、お肌にも、生き方にも、責任を持つべき年齢だ。」って書いてたけど、お肌にも生き方にも責任を持たないまま余裕で今に至るよ。

11月は毎年どうも落ち込みやすく不調で、寒さのせいかなんなのか久しぶりにめまいと耳鳴りも戻ってきちゃったし、でももうイソバイドシロップは二度と摂取したくないのでなんとか自分をごまかしている。
なんとなく今日思ったのは、向こう10年は経験に費やしていこうと思った。いい物を買って所有するよりも、外に出かけて旅行してなんかを見て、食べて、そういうことにお金使おうと。そっちの方がいい。

トム・ジョーンズの『拳闘士の休息』を読んだ。短編集。この前に読んだ同じ作家の短編集『コールド・スナップ』が強烈に印象に残ってたので、どうしても較べてしまう。こっちの方が生の声という感じはする。こなれてなくて、でも作者の生の声に近いような。でも『コールド・スナップ』にあったような一瞬の真理に到達したみたいな閃きはない。
肉体的な痛み。神に祈るとするならば「後頭部に一撃で楽に死ねますように」。苦しみ抜いて死ぬのはそりゃ嫌だ。登場人物はみんな窓のない部屋にいるようで、気分がけっこう引きずられた。
安心と信頼の訳者さんだけど、『コールド・スナップ』を先に読んでしまったら文章にちょっと物足りなさを感じた。整っているというか。
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2015年01月23日

MONKEYvol.4 ジャック・ロンドン新たに

こわい絵本特集に続いて『MONKEY』4号ジャック・ロンドン特集読みました。
「野生の呼び声」一挙掲載。
柴田元幸翻訳叢書のジャック・ロンドンは買い逃していたんだけど、去年ちくま文庫のアンソロジーで辻井栄滋訳「焚き火」(柴田訳では「火を熾す」)を読んでいた。
あれも極寒の地が舞台で男と犬が出てきて、今度は犬が主人公。
世界の描写がリアルなんだろうけど、想像つかない寒さと耳慣れない響きの地名でなんかもう幻想の域。
その後の対談にもあったけど、男の立場でも犬の立場でも等距離で書ける作家。
主人公犬のバックが北に連れ去られて使役されて、いい主人も悪い主人もいて、一緒に旅をして、戦いがあったり苦労があったり運命みたいな主人と出会って愛があったりして、それでバックに感情移入して読んでるかっていうとまたちょっと違うんだよなー。
ゴールドラッシュに群がる人々、人間が食物連鎖の頂点なんかじゃないって思い知らされる、生死が簡単にひっくり返る厳しい極限の世界で目覚めていくバックの誇り高さに打たれる感じ、だろうか。
こうして考えてくと、確かにアメリカらしい。

好きかどうかっていうとそんな好きなタイプじゃない(なんつってもあの「まん丸顔」の作者だからな…)けど、妙に惹かれるものがある。

もいっこ載ってたThe South of the slot.も面白かった。

AtoZの「ロンドンにおける文明の最良の部分は、対決することではなく愛することだからだ。」って言葉がすごく印象的。

今回はオープニングとエンディングが村上春樹。
短編「かえるくん、東京を救う」バンドデシネ版、これけっこうコマの描き込み具合と内容で理想的な漫画かも。
そういえばこれ、ちゃんとページというかコマ割りの流れが日本仕様の漫画と同じ感じで読めるなー。ウルジャンで読んでるニコラ・ド・クレシーは逆向きだから、あれっ?と思った。

雑誌最後に載っている村上春樹の連載で、「小説家になるためには、どんな訓練なり習慣が必要だと思いますか?」という問いへの答え。これってジャック・ロンドン特集において、だいぶ意図的に置かれた感じがする。
ジャック・ロンドンみたいな経験は現代ではもうできない、今は誰もジャック・ロンドンみたいには書けない、でも今は今なりの、自分なりのことが何だってできるってわりと前向きなメッセージに取れる。
タグ:文芸誌
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2015年01月20日

MONKEY vol.3 こわい絵本

今年の読み始めは雑誌『MONKEY』こわい絵本特集号になりました。
読み始め用の本は他に準備してたけど、読む暇がなかった上に実家に置いてきてしまった。
絵本ってちっさい頃に読んだ記憶があまりなくて、今に至るまで興味持ったこともなかったけど、今回の特集はちょっと不条理で、ちょっと怖くて、ふとした瞬間に世界が断ち切られて置いてきぼりにされちゃったような、短くて余韻を残すいい怪談を読むのに似た感触で、絵も文もとてもよかった。
ジョン・クラッセンの描くおばけは憎めないねー。
ブライアン・エヴンソンもよかった。
柴田元幸と穂村弘の対談を読んだら、穂村さんの「言葉やビジュアルとして書かれていることと、絵本を読んだ読者が感じ取ることは、本当はイコールじゃないはずなんです」、それが絵本の特徴と言えるという発言に、ああーと納得するものがあった。
あっ、つまり怖さってそういうことかもなあ。
あと穂村さんの
「(読んだ時に)どういう気持ちになるかは自分が決めたいし、今まで一度も名付けられなかった感情になりたい」
って言葉もよかった。
クラッセンや、アメリカやイギリスの書店や文芸誌の編集者へのインタビューとかもだけど、こだわりがある人の話は面白い、ていうかこの雑誌に載ってる人はそういう感じが多いけど、決してマジョリティじゃないけどコミュニケーションを否定してない、外に開かれてるマイノリティっていうか、うーん、そんな個人的なこだわりが整理して語れるまで洗練されてて、やっぱこの、自分だけのこだわりがあること、それを人に伝えられる力が強いっていうのは憧れるなー。

今回の猿からの質問は「立ち会ってみたい瞬間」
Q&Aというよりはそれがテーマのアンソロジーみたいだ。
なんか、政治とかイデオロギーを語りながら、ちゃんと私のような浮世離れした話が好きな人間にもグッとくる短編小説になるのってすげーなとスティーヴ・エリクソン読んで思った。生々しくなく寓話として描けてるというか。

今回も濃かったです。
タグ:文芸誌
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2014年03月07日

MONKEY vol.2



『MONKEY vol.2』は特集「猿の一ダース」、編者の柴田元幸さんが今読みたい作家さんということで、簡単感想を。

ブライアン・エヴンソン「ザ・パニッシュ」。罪。2人の少年の秘密から結末まで何とも言えず不穏。いじめっ子といじめられっ子、人生の勝ち組と負け組、そんな単純な上下関係では括りきれない2人の関係、単なる復讐譚じゃない。
なぜその結末から2人は逃れられないのか、ぼかされてるそこに何かがある。嗜虐性がきれいに隠れてる感じ。
不穏で怖い。

神慶太「川」、川をインテリアや衣装にする話。水が流れるのを眺めるように読める。不穏な短編に挟まれて収まりがいい。

ケリー・リンク「モンスター」、最近『スペシャリストの帽子』を読んだばかりだったので、女の子を書く作家さんという印象があったけど今度は少年達のキャンプの話。ちょっと母親視点な感じがする。うーん、すげー力技。モンスターにも色々いるよね。

川上未映子「彼女と彼女の記憶について」、主人公は過去の田舎の同級生たちを冷めた目で観察する芸能人という、私と世代が近いという以外は何ら感情移入する余地のない立場の女性の一人称なんだけど、不思議と読みやすい。観察する視点に偏りがないからかなあ。
そして予定調和の空気を一瞬で変えちゃう2文字の威力。気持ち良いくらい一気に非日常が侵食してきた。これ好き。

マシュー・シャープの超短編。歩き続けるうちに月に着いたとか、ゾンビが殺人者と同衾とか、日常の延長線上の非日常っぷりが、うーん、そこはかとなく変で好きかも。長編を読んでみたくなった。

スティーヴン・ミルハウザー「息子たちと母たち」、これは読む人によってリアリティも怖さのレベルも異なるんだろうなー。子どもの立場か親の立場かでも大きく違うんだろう。そういう違う世界が垣間見える。
過去と罪悪感にもったりと囚われる読み心地、嫌いじゃない。どうにでもとれる、同時に何種類もの意味を内包する深読みしがいのある台詞も。

小野正嗣「ウミガメの夜」、相変わらず視点がぐるぐる揺らぐ独特の文章で、この世界に入り込むまでは苦戦するけど、3人のおバカ大学生の旅がバカなくせに妙に切実で心掴まれる。

今回の特集はカラーがはっきりしてる感じ。
・なんとなく怖い
・うっかり日常を逸脱する
・人生も死も冗談めいている

柴田さんからの質問にいろんな人が答えるもう1つの特集は、ブラッドベリの『華氏451度』にちなんだ「もしあなたが、1人ひとりが1冊の書物を記憶する抵抗運動に加わるとしたら、何という書物を選びますか。またその理由はなぜですか」

選ばれた本よりも、この質問に対してどういうスタンスで臨むか、記憶それ自体が実現可能かどうか、記憶するのは誰のためか、過去のためか未来のためか、重点を置くのは失われる本か反抗運動なのか、回答者の個性が浮き彫りになって面白かった。

連載も相変わらず面白い。川上弘美の連載は単行本になるのが待ち遠しいなー。古川日出男の宮沢賢治リミックスはラストにもってくるテンションの上げ方がすごかった。
タグ:文芸誌
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2014年01月02日

今年の抱負というか読書予定

例年、大晦日でいろいろと燃え尽きて惰性で送る正月です。
親戚で集まって、去年いとこの子が甲子園に出てたらしいと聞いたのが初耳で驚きました。知ってたら初甲子園行ったのにー。

さて、年が明けたので今年の読書予定を。
クリスマスから大晦日と新年1冊目は特別な読書なのですが、去年はヘミングウェイで終わり、今年の1冊目は神林長平です。

今年は去年に引き続き、半七捕物帳、クイーンの国名シリーズ、NOVAを最新刊まで読むこと、白水Uブックスの「海外小説 永遠の本棚」は面白そうなのでついていきたいこと。
あと刊行予定でフレッド・ヴァルガスとロラックを見かけたので楽しみにしていること。

今年、挑戦してみたい本としては『デカメロン』。
あと泉鏡花を読みたいと思ってます、できれば全集がいいのですが、コヅカイが足りないので、何をどう読むかは考え中で。
タグ:読書予定
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