2012年04月25日

原色の想像力2

『原色の想像力2』を読んだ。創元SF短編賞アンソロジー、1は読んでないけどなんとなく読んでみた。ちょっとずつ感想。

「繭の見る夢」
同人小説っぽい印象。なにか内容と量が合ってない感じがして……最初の文章のままもっとだらだら長く読むか、もっとずっと短く読みたい。
収録に際して中途半端に削ったときに、大事な萌える部分を削ってしまったんじゃないのという気がしてならない。

「ニートな俺とキュートな彼女」
星新一とか藤子F不二雄がもっと短くうまくまとめてそうな話。あまり新味を感じなかった。

「WHAT YOU WANT」
最初は入りにくかったけど、他の収録作が内容に比べてちょっと長いなと感じるものが多かったのに対して、これだけもっともっと読みたいと思った。
新作ですってスペオペを出されてもまず私は読まないので、ここで読めてよかった。
著作が出たらチェックする。

「プラナリアン」
最初は雰囲気があってよかったんだけど、ラストが尻すぼみだったもったいない。

「花と少年」
読みドコロが選評を読んでもよく分からなかった。

「Kudanの瞳」
深夜アニメっぽい。雰囲気だけで内容が薄く感じる。

「ものみな憩える」
この中に並んでいるとすごく文章に安定感があって読んでいて落ち着く。
単品で読んだら、どうかな……。

「洞の街」
完全に、合わなかった。読めないこともないけど読んでいて読みづらい。ここまで合わないと思うのも滅多にないので、逆に個性があるというか、はまる人はすごく好きなのかもなあ。

選評が実はいちばん面白かったかもしれない。
どういう視点で読むのかとか、アンソロジー前提だとこういう選び方するのかとか。
 
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2012年04月19日

超哲学者マンソンジュ氏

柴田元幸訳ということで衝動買いしていた『超哲学者マンソンジュ氏』を読んだ。

構造主義についての研究書っぽく始まりながら、読み進めていくとあれって部分が増えていく。

徹底して嘘。徹底して曖昧。徹底して冗談。
本当にキレる人の本気はこんなに知的でこんなに笑える。

9章なんか、笑いながらもすごい高みにのぼっちゃったなあと唖然とする。
構造主義とか一片も分かってなくても面白いしなんか凄いもの読んだ気になれるという変な本。

寄稿された「まえがき/あとがき」、柴田元幸のエッセイ、はては参考文献、索引まで抱腹絶倒。

 超哲学者マンソンジュ氏
 著者:マルカム・ブラドベリ
 出版社:平凡社ライブラリー
 発売日:2002-05
 価格:¥ 1,050
 ISBN:4582764312

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2012年03月22日

氷上旅日記

自分自身のことをじっくりと考えていたら、はっきりしてきたことがある、ぼく以外の世界はつじつまが合っている、ということだ。


1974年。ヴェルナー・ヘルツォーク32歳。
映画批評家のロッテ・アイスナーが危篤と聞いて、ミュンヘンからパリに向かって歩き始める。
ぼくがたどり着くまで彼女は死なないのだと、しっかり思い定めて。

その旅路に祈りはない。礼拝堂に寄ることもなく、ただ淡々と雪や嵐の荒天の陰鬱な風景を歩んで行くこの日記を読んで、けれどこの旅が巡礼であることを疑う人はいないだろう。

動機は妄執。けれどそれは歩くことで彼女の生を引き伸ばす必死の願いであり、歩くうちに身体に色々な経験を取り込んで、そして彼女の死に直面する準備をしてゆく道順でもあった。

自分の足で歩かなければ見えないものがあると、よく分かってる人なのだろうな。
思えばいつでもつじつまの合わない自己認識をひっさげて、自分の足で歩き自分の目で見ることを大切にする人だ。

ぼくが歩いて旅をする人間であり、それゆえに無防備だということを、彼女は知っていたので、ぼくの気持ちをわかってくれたのだ。


逆に自分が死の床に就いていて、こんな阿呆がたずねてきたら、きっと彼女と同じように微笑まざるをえない。

『氷上旅日記』 ヴェルナー・ヘルツォーク 白水社
 
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2012年03月18日

シャーロック・ホームズ アメリカの冒険

原書房から何冊か出てる、パスティーシュアンソロジー。
読むのはクリスマス以来かな? 今回のテーマはタイトルの通り。

それぞれの作品に、アメリカ各都市の歴史や特色が表れてて面白い。

読み応えあって全体的に楽しんだけれど、基本的にホームズのパスティーシュって、読み手もある程度の知識があって、ほうほうこのネタで来ましたか、っていうように作者と読者の駆け引きで楽しむ面があると思うので、今回アメリカ舞台の作品について読むための前知識が足りないなーとも実感させられた。

考えてみたら、正典だってもう10何年も読んでなかったしなあ。

若き日のホームズ兄弟が出てくるロイド・ローズの「幽霊と機械」、あまりホームズは活躍しないけどロバート・ポールの「ユタの花」、ワイアット・アープと競演するローレン・D.エスルマンの「咳こむ歯医者の事件」が好み。

あと、ダニエル・スタシャワーが相変わらずフーディニ兄弟を書いてて、ちょっと嬉しくなった。

それから個人的にデイビー・クロケットに関心があったので、ギリアン・リンスコットの「クロケット大佐のヴァイオリン」は興味深く読んだ。


 
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2012年03月09日

わが読書

諸君がまだ生きていることに、まだ経験を積み重ねつつあることに、孤独と怠慢のにがい果実を味わっていることに、喜びを感じ給え。


12月からちょっとずつ読んでいたヘンリー・ミラーの『わが読書』をやっと読み終わった。

そもそも去年読んだ紀田順一郎の『幻想怪奇譚の世界』で、「ヘンリー・ミラーの100冊には大きな影響を受けた」と書かれていたのと、そのあと読んだ狐さんの『遅読のすすめ』でも取り上げられていたので興味をもって、図書館で借りてみた。

で。

数ページ読んで、もう、兄さんと呼ぶしかないな、と。
ええと、『遅読のすすめ』の感想の時もちろっと書きましたけど、尊敬する読書家ってのが何人かいて、北村薫はもういつまで経っても手が届かない尊敬する先生、山村修はもちょっと親しみやすい親戚のおじさん、ヘンリー・ミラーは兄貴って感じ……。

『わが読書』が書かれたのはヘンリー・ミラー50代の時ですが、先入観なしで読んだら、多分20代後半だと思います。
そのくらい若々しくて、暑っくるしくて、自分もハタチそこそこの大学生に戻って、サークルOBかなんかの熱弁をスゲーかっこいい! ってうっとり聞き入ってる感じ。

印象が残る文章がいっぱいあって、いっぱいメモした。後半の精神的なナニカがメインの部分はちょっと脱落ぎみだったので、またいつか……。
訳者の田中西二郎の後書きも、ミステリの文庫で何度もお世話になっている訳者さんの肉声を初めて聞いた感じで面白かった。

実際に100冊から何を読もうかな……と思うと、とりあえず『老子』と鈴木大拙の禅の本かなあ。

『わが読書』買いたいなあと思っていたけど、水声社からヘンリー・ミラーコレクションってのが出ていたらしい。
次に注文するときに、こっちを買ってみよう。


 
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