2012年07月06日

フランス映画未公開傑作選

勢いで3回分の前売り券を買っていたので、上映期間が短かったので焦りつつも3回に分けてナナゲイで見てきました。

見た順に。

「ある秘密」クロード・ミレール監督
虚弱な主人公といかにも体育会系な父親とのすれ違い気味な家族関係がどう展開していくのかと思っていたら、過去の戦時中の「ある秘密」に描写はシフトしていく。
戦争下の悲劇をごくごく私的な家族的な面から描いた、佳作。

つうか、結婚式の当日に既に破局と心変わりがぷんぷん匂うこの描写がもー。新郎の顔つきがエロすぎる。

「刑事ベラミー」 クロード・シャブロル監督
2人のジョルジュに、という献辞から始まるこの映画、ジョルジュ・シムノンとジョルジュ・ブラッサンスに捧げられたシャブロル監督の遺作だそうで。

休暇を楽しんでいるベラミーの元に訪れた奇妙な依頼人。
保険金殺人の捜査は順調で、次々と現れる関係者に親身になって話を聞き出していくベラミーだけど、困ったやくざ者である自身の弟とはいがみ合い相当に手をやかされる。
夫婦の甘やかな関係と捜査そのものは軽妙だけど、弟との関係は問題を抱え重苦しい、軽さと重さを備えた絶妙な空気。

「三重スパイ」 エリック・ロメール監督
紹介文に「裏切り、騙しあい、隠ぺいに満ちた痛快な傑作サスペンス」って書いてあって、でもその文章から想像するものとは大幅に違うというか、これを見て痛快な傑作サスペンスを読み取れる人は、相当デキる人というか知的な人なのじゃないかと思うよ……。

どっちかというと、ソビエトから亡命した三重スパイである主人公の立場、視点から再構築された1930年代フランスの思想的な傾きとか国際情勢とかを描く方がメインのような気がして、終盤のあれやこれやは、正直いってどう捉えたらいいか分からない。
そういう悲劇があったとさ、でいいのかなあ。

難しいよ。
 
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2012年04月18日

鬼に訊け 宮大工西岡常一の遺言

ナナゲイで「鬼に訊け 宮大工西岡常一の遺言」を見た。

法隆寺宮大工棟梁の家に生まれ、法隆寺の解体修理、薬師寺の金堂、西塔などの再建に携わった西岡常一さんの聞き語り映像など。

本で読んだ知識として、薬師寺がいつ建立したか、いつ焼失したか、いつ再建したかというのは知っている。
初めて薬師寺を訪れたのは中学の修学旅行だった。
東塔と朱色が鮮やかな西塔は一見アンバランスに見えたけれど、そう感じるのは今現在の点で見ているからで、ほんの100年前には西塔は焼失していて存在しなかった。そして100年後には、200年後には今よりしっくりくる姿でそこに在るのだろう。
奈良の魅力は人ひとりの人生でははかれない時間の流れ、連続性にあるのだと気づくきっかけになったお寺だった。

こうして映像で見てみると、薬師寺の伽藍再建がどんなに大きなプロジェクトだったのかを改めて実感する。

西岡さんが飛鳥の、白鳳の、室町の、と並べる言葉はただの単語でなくて、それぞれの時代の職人が確かに残した技術の跡と、ご自身の何十年という経験に裏打ちされた知識がある。

道具を使う場面、道具について語る場面は特に良かった。
槍鉋は、折れ釘を集めて堺の刀鍛冶に作ってもらった、なんていう話とか、1日の仕事が終わったら、夕食の前に道具を研ぐのだとか。

槍鉋で削られた木目のなめらかさを見れば、それは他の道具と違うのだと一見して腑に落ちる。
 
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2012年03月11日

シャドウ・ゲーム

『シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム』見てきました。

1作目もかなり好きですが、今回も楽しみましたよ。
また細かいところでマニア心をくすぐってくれるし、前作ヒロイン(?)の出番が少なくてあれってなりましたが、ノオミ・ラパスのアクションはかっこいいし。

お茶目なホームズとキレやすいワトソンのこの2人にもすっかり慣れました。

……うーむ、これがいわゆる公式が最大手というやつか……。

すっごく楽しかったです。やばい、もう1回くらい見に行きたい。DVDも買う。

カタルシスがあって、一瞬目が合い、その直後に変化する2人の表情。

ほんの数コマ、ほんの数秒の演技が途方もない熱量と情報量をもつ、その瞬間にピークをもっていくための伏線がきっちりしているというか。

そういう瞬間のために多分、映画を見ているんだろうなーと思います。

あああよかった。

来週の日曜にTVで1作目をやるんですけど、公式サイトのインタビューで芳忠さんがロバート・ダウニーJr.のことを

ちょっとエキセントリックなところもあるけれど、コメディタッチのところもあるし、それにすごい色気があるしね。それでいて子供のような目をするときがあるんですよ。本当にかわいい。


って言ってはって、そんなホームズをどんな風に演じてくれるのかすごく楽しみです。

そういえば、映画公開が近づいていたってこともあって衝動買いした『シャーロッキアン!』っていう漫画が面白かったです。

エピソードと薀蓄のバランスがほどよいし、師匠と弟子みたいなラブコメ手前な2人の関係も丁度よい感じ。

丁寧にひたむきに読書して、ひとの気持ちに真っ直ぐ向かい合おうとする女の子なんて、好きにならないわけがない。


 
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2012年03月07日

世界最古の洞窟壁画

ヴェルナー・ヘルツォーク監督の『世界最古の洞窟壁画 忘れられた夢の記憶』を見てきました。

フランスのショーヴェ洞窟、3万2千年前の壁画を撮影したドキュメンタリ映画です。

洞窟ってそれだけで不思議な魅力がありますよね。
想像を超える時間が凝縮された神秘的な美しさと同時に、鍾乳石のなんともいえない生々しさや、暗闇の恐ろしさもあって、現実世界からかけ離れた心もちになります。
ヘルツォーク監督は相当いろんな場所に行かれて経験されてる方と思いますが、そんな監督にして、「外に出たらほっとした」というくらいに。

壁画は1つの時代だけでなく、何千年という時間を隔てたものもあり、写実的な馬がいて、サイがいて、手のひらの跡があり、女性の下半身がバイソンの頭部と繋がったものがあり……表面を結晶で覆われた、絶滅したホラアナグマの骨がたくさん散らばる様子は幻想的で、画面に酔います。

3D映画なのですが、洞窟の中を1歩1歩進んでゆく感じ、もう少しで鍾乳石に触れそうな感じが素晴らしかったです。

オープニングのブドウ畑から後記まで、ヘルツォーク監督の意志が行き届いていて、凄いものを見た、としか言いようがありません。

元サーカス団員の考古学者への、「彼らはどんな夢を見たのか、夜は怖かったのか」という問いが忘れられません。

帰りに丸ジュンに寄って買い物。
そろそろ読み終えようと思ってヘンリー・ミラーの『わが読書』をこつこつ読んでいたのですが、ちょうど岩波文庫でジャン・ジオノが出ていたので衝動買いしました。
ずっとジオノ讃読んでたしなあ。これもご縁でしょう。

『丘』 ジャン・ジオノ 岩波文庫
『民俗のふるさと』 宮本常一 河出文庫

2冊購入。
 
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2012年03月06日

去年のクリスマスの話

去年のクリスマス前に京都駅で見た、ヘルツォークの『キンスキー、我が最愛の敵』と『フィツカラルド』の話です。

なんていうか、荒唐無稽な物語は映画という枠の中でだけリアルなんですけど、物語が現実を凌駕するというか、物語の中でもないと無理な実現不可能な設定を力技で現実にしてしまう、映画と現実の境界を泥臭いやり方でぶっ飛ばす作品だったんだなー、ってのが今日になってやっと腑に落ちました。

夢が現実になるなんて映画の中だけの話でしょう?
……いや、これは現実だよ。

っていう。うーん、わかりにくい。

ヘルツォーク監督と怪優クラウス・キンスキー。2人とも狂気という言葉で表現されることが多い強烈な人物です。

撮影現場がどのくらい凄かったかっていったら、エキストラで協力していたインディオ達が相談して、族長がヘルツォーク監督のところに「監督のためにあの男(キンスキー)を殺しましょうか?」って申し出てきたくらい。

つってもヘルツォーク監督も相当の人物で、現場を放棄しようとしたキンスキーに銃をつきつけて、この映画から逃げるならば「8発お前の頭に撃ち込んで、最後の1発で自分を撃つ」って言い放つ……そんな強烈なぶつかり合い。

対立する2人というのは大好物なので非常においしかったのですが、私なんぞの貧相な想像力では太刀打ちできないこの実在人物。

何度もキンスキーを殺したいと思った、と苦笑いしながら語るヘルツォーク監督。
けれど、もう亡くなった彼を抱きしめたいと思うことが今でもある、と語るときの顔は愛惜があふれるもので。

たくさんのぶつかり合いを経てたどり着いた「我が最愛の敵」という言葉。
Mein liebster Feind……。

そして、ヘルツォーク監督の「私はあの狂気を最後には飼い慣らした」って笑いにはぞくぞくさせられました。
 
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