2017年12月26日

2017年のMONKEY

あまり本の感想をまともに書かなくなってしまった…というかそもそもまともに本を読んでもいないのだが、『MONKEY』だけはずっと継続して読んでることもあり、読んだ印象を残しておきたいので、今年も3冊分まとめておく。



特集は「ともだちがいない!」
巻頭は谷川俊太郎。ともだちがいない、いらない、亡い……ちっちゃい子から若い子から年寄りまで、性別も年齢もばらばらな断片。そういえば「ともだちがいない」という言葉から思い描いていたのは自分のことだけだった。同じ言葉で思い浮かべる顔は人によって違う。当たり前だけど、作者の引き出しが多い。
ひとつひとつはさらっと読んでしまうけど、気づくと自分のことを考えてとにかく何か語り出したくなっている。
今まで、現在、これから。そういうふうに人を動かす言葉。

感想からはずれちゃうけど、そういうふうにしてせっかく考えたことなのでついでに書いておく。

自分にとって友達とは何かというと、チェスタトンの短編の好きな言葉、
「友情は時間を蕩尽する」
やっぱこれに限ると思う。
共に長い時間を過ごした人。
なんか私にとっては、友達とは後になって定義するものだなー。思い返せばあれが友達だった、みたいな。
だからお友達紹介してって言われるといつも友達はいませんって答える。

それからエミリー・ミッチェルの短編が2つ。
店員のスマイルが数値化され評価に影響する世界とか、自分の娘が選んだおともだちロボットが、嫌いな大きな蜘蛛だったとか、SFのショートショートみたいな着想が、こまやかなディテールの描写ですんなり入れるし、説得力があってとても自然に読める。
ラストが登場人物にとっていいのか悪いのか迷うような、読み手の価値観が試される感じ。うまい短編書くなああと素直に感心する。

短編の後に村田沙耶香と伊藤比呂美がこれをどう読んだかというインタビューがあって、巻末の村上春樹のアンデルセン文学賞受賞スピーチも、アンデルセンの「影」の話をしていて、作家さんの「読みドコロ」を面白く読んだ。

あとはバロウズの「ジャンキーのクリスマス」が好き。



特集は「翻訳は嫌い?」
柴田元幸の日本翻訳史講義が受けられるとなったら、参加費と交通費を払ってでも行くという人はいくらもいると思うけど、これを買うとそれの明治篇前半が載っててしかも好きな時に何度でも読める。ほんとMONKEYってサイコー。とステルスしてないマをする。

確かモンキービジネスの時も翻訳とついた特集号があったと思う。(翻訳増量号)
あれもめちゃ気合が入っていたが、あっちはすごいカッコいい短編がどーんどーんどーんと大ボリュームで載ってたのに対し、こっちはもっと翻訳という行為について、なんていうか母語で書かれたんではない小説を読むということについて、日本の翻訳の歴史とか、翻訳する人がどんな所に目を配ってるかとか、翻訳モノはまあ読む方だけど、普段は気にしたことないとこを改めて認識させられてかなり読み応えある号だった。

それから面白い試みもあった。
石川美南の短歌(英訳)を読んだケヴィン・ブロックマイヤーが、それを小説に「翻訳」した「大陸漂流」とか。
『たべるのがおそい』の2号にも、石川美南と宮内悠介の共作があったけど、石川美南の短歌はどんどん新しい物語を生むんだよなー。強い。
短歌の引用って迷うところだけど、それとその英訳があまりにも魅力的だったのでここで引用紹介させていただく。


陸と陸しづかに離れそののちは同じ文明を抱かざる話
A tale where two continents quietly separate and cease to share a common civilization.



それからリディア・デイヴィスの「ノルウェー語を学ぶ」は、ちょっとしかかじったことのないノルウェー語の小説を、辞書などを使わずに読む試みの記録。しかもダーグ・ソールスターのこれは小説なのか?と議論を呼ぶようなややこしく長大な何かを。元々複数の言語の素養があるからできることかもしれないけど、知らない言語を少ない手がかりから習得していく経緯はなかなか興味深かった。そして、そうまでして未知の言語の小説を読むということ。

あと小沢健二の「日本語と英語のあいだで」。息子さんが言葉を覚えて使いこなしていくことから始まる2つの言語にまつわる話は、音に注目していて新鮮であととてもかわいい。
この人の文章読むたびに好感をもつ。

小説では伊藤比呂美の「死んでいく人」が、決して感情的な書き方ではないのにほんとエモいとはこのことって感じで引きずられた。



「食の一ダース 考える糧」特集。
食がテーマの競作。今回は日本作家の短編が多めで、食テーマの短編っていってももちろんMONKEYだから、もやつくことがある毎日だけれどあったかいご飯を食べてほっこり〜なんてことには当然ならず。読んだことない最近の作家さんのちょっと変な話がいろいろと読めて面白かった。
奇妙な話が色々で大変好みだったけど、中でも村田沙耶香、砂田麻美がとてもよかった。前者はまあ現実の範囲内で後者はちょっとSF的な設定なんだけど、語り口が逆っぽいというか…。
それから堀江敏幸と戌井昭人も面白かった。
それになんといっても、それぞれの短編につけられた食事の写真が、一見よくいうインスタ映え的な写真がどことなく不穏で、美味しそうとストレンジの絶妙な中間で、それぞれの短編に合っていて良かった。

食テーマの競作に前号から続く柴田元幸の「日本翻訳史明治篇」講義後半に、ボブ・ディランが『白鯨』と『西部戦線異状なし』と『オデュッセイア』を語るノーベル文学賞受賞講演の3本立て(+いつもの連載)という豪華仕様でした。
タグ:文芸誌
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2017年12月12日

2017年に行った博物館・美術館

2017年に博物館、美術館に行ったのは46回でした。このメモも何年分か貯まってきたので、新しくカテゴリ作りました。

昨年あまり行けなかったという鬱屈を晴らすようにあちこち行きましたが、今年は特に自分の興味のある展覧会が多かったということかもしれない。
仏像では奈良の「快慶」、東京の「運慶」、大阪の「木×仏像」、地方では個人的に注目している和歌山県博も2回行けたし、兵庫、六郷満山、越前加賀とかなり充実していました。
あと夏に播磨のお寺巡りをしたり、高野山に行ったり。展覧会を見るのもいいんですが、現地に行くこと、現地の山や川を見て、食べて、現地のお堂で拝観することも大切にしたいと改めて思いました。
大阪市内の密教美術特別公開もちょくちょくあって通いましたが、行けなかった回もあるので、これはいつかまとめて大阪市美術館とかでやってくんないかなー。それに毎回の資料を1冊にまとめてほしい。
あーあと夏の奈良の「源信」も凄かった。
絵は海北友松、河鍋暁斎、狩野元信、長沢芦雪。あと山梨県美の常設と姫路でユトリロ回顧展くらい。

毎年こうやって行った場所をまとめていると、これだけあちこち行って自分の中に経験値はちゃんと貯まってるのかなーとか、行く意味はあるんだろうかとか思ってしまうんですが、そんなことをつらつら考えてると、なんかしら外に基準がほしくなって、あっそれで趣味的なナントカ検定の需要があるんだろうか? そういえば奈良検定の2級を何年か前にとって体験学習も行ったけど、1級の受験資格ってまだあるんだろうかーとかどんどん思考がななめにずれていく。

そろそろなんかしらアウトプットする時期が来てる気がするんですよね。なぜそれが好きなのか、それのどこが好きなのか、どこに着目しているのか。今まで「なんとなく好き」だったそういったことを言語化していく時期が。
しかし言語化するには語彙がないので、今年買った図録やなんかをまずはきちんと読むことからしなければなーと思います。

以下は今年出かけた場所一覧です。

1/21  南極建築 LIXILギャラリー
1/22  京都国立博物館
2/11  京都国立博物館
2/12  有田川中流域の仏教文化 和歌山県立博物館
2/25  天神さま/富本憲吉 大阪市立美術館
4/14  木×仏像 大阪市立美術館
4/27  快慶 奈良国立博物館
    武田五一の建築標本 LIXILギャラリー
5/2  海北友松 京都国立博物館
5/12  祈りのかたち 竹中大工道具館
    ひょうごの美ほとけ 兵庫県立歴史博物館
    ユトリロ回顧展 姫路市立美術館
6/9  村野藤吾建築設計図/住友春翠の文化遺産 京都工芸繊維大学美術工芸資料館
7/5  大阪市の密教美術特別公開 辰野ひらのまちギャラリー
7/23  これぞ暁斎! えき美術館
7/28  源信 奈良国立博物館
8/2  相応と良源 長浜城歴史博物館
8/4  山梨県立美術館
8/7  泡坂妻夫展 東京古書会館
8/16  正智院の名宝 高野山霊宝館
9/1  源信2回目 奈良国立博物館
9/29  運慶 東京国立博物館
    狩野元信 サントリー美術館
10/1  ほとけを支える 根津美術館
    モノの力ヒトの力 國學院大學博物館
    インターメディアテク
10/19 九州歴史資料館
    六郷満山 九州国立博物館
10/21 聖なる山 大分県立歴史博物館
    求菩提資料館
    英彦山修験道館
10/26 関西大学博物館
10/31 長沢芦雪 愛知県立美術館
11/11  異人研究 泰澄11の疑問 越前町織田文化歴史館
    豊原寺・東尋坊と白山へのまなざし みくに龍翔館
    泰澄 福井県立歴史博物館
    福井市郷土歴史博物館
11/12 那谷寺と白山信仰 小松市立博物館
    白山下山仏と加賀禅定道 白山市立博物館
11/17 大津の都と白鳳寺院 大津市歴史博物館
    末法 細見美術館
    国宝 京都国立博物館
11/18 宮脇綾子 美しいアプリケ 神戸ファッション美術館
    横尾忠則現代美術館
    千年の甍 竹中大工道具館
11/19  道成寺と日高川 和歌山県立博物館

2017年11月19日

和歌山県立博物館「道成寺と日高川」展

和歌山県立博物館の「道成寺と日高川」展に行って来た。
当初は会期が始まってすぐのミュージアムトークの日に行くつもりが、実家の方で外せない予定が入ってしまい、いつ行くかなあ、1日で道成寺とハシゴできるかなあと迷っていたところ、台風で講演会が延期になり、元々予定されていた関西文化の日の講演と二本立てになると知って、そんな贅沢な日ってないよと、いそいそと出かけた。
博物館に着いてまず1時間半、講演をみっちり聞いた後に40分くらい展示が見られるはずという完璧な時間配分。

展示室に入るなり、すらりとした千手観音像に吸い寄せられた。
本堂の北向観音の内部から発見され、修復復元された奈良時代の像。
それから今回新たに寺内から発見されたというこの千手観音像の手を合わせた仏手もあったけど、こちらもとてもすらりとした指先まで美しい手だった。
道成寺の仏像がいろいろあり、その中でも頭部が鳥?の迦楼羅立像には驚かされた。

道成寺縁起の大体の話は知っていたけど、実際に縁起を見てみたらなんか登場人物が個性的な、道成寺の僧とかけっこう憎々しい顔つきをしていて、男が追われて逃げ込んできたのに、あまり深刻じゃないような…。
女性の顔、上半身、全身と異形に変身していくのが印象に残った。

展示を見ていて浮かび上がってきた、熊野参詣道の切目王子など、熊野詣した人に害を及ぼす何か道成寺縁起の下地になりそうな話がとても興味深く思った。
熊野の参詣曼荼羅とか載ってるかな、熊野三山展の図録を読み返してみよ。

講演会1は「道成寺縁起と流域の宗教文化」。
道成寺の文献資料はほとんどないそうで、わからないことが多いけれど、その地域の歴史から、道成寺縁起を逆照射していくとおっしゃっていて、そうそのスタンスが魅力で和歌山県博に通っちゃうんだよな〜。

北向千手観音から発見された千手観音は顔がなかったところから復元されたそうで、元々正面にウロがある材で、背面側に当初材が多いそう。
胴がくびれて腰から下が細くて、他の奈良時代の多臂観音像との比較がわかりやすかった。
都の南の端を守る鎮護のお寺という姿が語られ、そしておよそ150年で御本尊が交代していることから、おそらく地震による破壊があり、新しく御本尊が造られた10世紀のことが講演によって次々と明らかにされていって、大興奮の時間だった。

あと日高川流域に熊野神が勧請されたこと。熊野速玉大社の家津御子大神像が神像としては一般的でない跪坐(正座)をしていること、しっかり見ていたのに気づいてなかった。

講演会2は「道成寺縁起の謎をさぐる」。
道成寺縁起を「日本無双の縁起」といった足利義昭の略歴から始まり、縁起の人物の多彩な表情を見ていって、その顔を手がかりに、描いたのは南都絵所の琳賢か?として、義昭の話は少し遠回しかと思ってたけど、講演の最後に至った場面に、ああそれで義昭の経歴が必要で、こういう構成だったのかーと膝を打った。
素晴らしい講演でした。

講演のあと、急いでもう一度ぐるぐるまわった。
すらりとした千手観音の後ろ姿を名残惜しく見て、仏手を見て、熊野速玉大社の家津御子大神を見て、熊野権現本寺仏像見て、江戸時代の縁起もばばばっと見比べて、頭がはちきれそうになって帰宅。
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2017年11月18日

関西文化の日は神戸で

ところで、このブログを書く時に読み手の存在をあまり想定していなかった。自分と、たぶん惰性で見にきてくれてる古い友達はいると思う。
本や漫画や映画なんかの感想を書く時は、それをまだ読んでない友達に紹介するように書こう、とはなんとなく思っていた。
でもけっこう博物館とか行くようになって、自分の知識もそれに応じて蓄積してくると、この架空のお友達の知識レベルをどう設定したらいいんだろう。
自分のためにこういうものを見て、こう感じたとブログにメモしておきたいことがあって、その時に自分は分かってる前提を、どのくらい説明した方がいいんだろうか?というのは、実はわりと頻繁に悩んでいる。

興味ない友達ならナナメ読みしてくれるだろうけど、検索で飛んできた人が読むとしたら、自分が見たものに対して、自分の責任で書く文章に対してなるべく誠実でありたい、とは思っているんだよー。
でもあまり丁寧に説明したら、気軽に書ける日常ブログじゃなくなってしまう。

というのを、関西文化の日に出かけたと書こうとして、まず関西文化の日とは何かから説明した方がいいのか?と迷いつつ考えた。

毎年11月にある関西文化の日は、関西の多くの美術館、博物館、資料館などが無料で見られる嬉しいイベント(ただし全てが無料になるわけじゃない)
万博公園に行ってみんぱくに入るのが定番だったけど、今年は今まで足を運ぶ機会がなかったとこに行ってみることにした。

まず向かったのは神戸ファッション美術館。阪急民なので梅田で阪神に乗り換えて、魚崎で初めての六甲ライナー。「宮脇綾子 美しいアプリケ」展。

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シャケとか野菜とか、日常の、主に台所で見られるものが題材になっている。
元々の布の素材感や柄を残したまま新しい形になっているのが面白い。いかにもハレの日っぽい派手な柄の伊勢海老とか。あとコーヒーを濾した布を使ったスルメのいい色とか。
それから題材の面白さ。串にさした魚とか、刺身を取った後の骨が見えてるカレイとか。
で、アプリケだし平面だし布の色柄が残っているので、デフォルメではあるんだけど、フォルムとか質感が妙にリアルに感じる。玉ねぎから芽が伸びた感じ、冬瓜のわたの感じ。もう何年も家で料理してきた経験が、これはリアルだと言っている。
対象物をまずよく観察すること、それを布のどの部分をどう使ったら再現できるというイメージが優れてるんだろうなあ。

常設は「ファウンデーション ドレスの内側」特集。ドレスのあのフォルムを作るために、内側に着るものの歴史。これも見ていて楽しかった。

昼食をとって、六甲ライナー住吉駅まで行ってJR乗り換え。
次は横尾忠則現代美術館へ。灘駅から美術館への上り坂に久しぶりに神戸を実感した。今年の台風被害で改修工事が入り、休館していたのが再開したばかりの「横尾忠則 HANGA JUNGLE」展。

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瀬戸内国際芸術祭で豊島横尾館に行ったのでまとまった作品を見るのは一応2回目ではあるけど、好きな方には失礼だがどういう感想を抱いたらいいのかよくわからないまま見た。
同じ文脈での色の組み合わせとか違いによる印象の違いを見たらいいのか?
カラフルでなんとなくオシャレって思ったらいいのか?

結局私は平凡な感性なのだよ…と思いつつ、次はバスで新神戸駅方面に移動して、竹中大工道具館へ。

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「千年の甍」展。藁葺、茅葺、檜皮葺、杮葺、屋根には修繕が要ることはなんとなく認識してたけど、瓦ってなんとなく不変に思ってた。そっか古建築の修復には瓦職人さんも必須だよな。
現代において「実際に葺くことができる古代瓦」を復元する方法や、古代と現代の葺き方の具体的な違いなど、ここならではの展示だった。

関西文化の日を堪能した後は、せっかく神戸に来たので、元町方面に移動する。
地下鉄の駅から歩いて行く途中、兵庫県公館の門が開いてたので中に入ってみることにした。

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毎週土曜日に一般開放されているらしい。
明治35年竣工の兵庫県本庁舎で空襲で焼けて復旧されて、今は迎賓館と県政資料館として使われているそう。
最初の建物の設計は山口半六。といえば、金沢の四高記念館に、近代文学館が入ってることもあって行ったなー美しい廊下が印象的だった、と模型を見ながら思い出した。
当初あった中庭は、3階に復元されて屋上庭園のようになっていた。屋根の形が、当初の形を復元した部分と復旧時の部分で違うこととかガイドの方に教えていただいた。

せっかく神戸に来たので、おやつは少し並んでモンプリュでオプティミスト。お酒つよめのラムレーズン。

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ここのケーキは大人味で、苦いは美味しいと初めて知ったのもここだったと思う。神戸は色々ケーキが美味しいとこあると思うんだけど、最初に入ったここで十分満足してしまってなかなか他に行かない。
おみやげも買ってセンタープラザをうろうろして帰宅。
タグ:美術館
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2017年11月17日

大津と京都で博物館

秋、京都国立博物館では「国宝」展をやっていた。
会期は4期に分かれて、展示替えが多い。自分のコヅカイと余暇を考えると行けるのは1回……というわけで、事前に出陳リストを見ていつ行くか念入りに検討し、4期の、夜間開館のある金曜に行くことに決めた。

で、京都に行くんならと、同じ日に大津も行ってきた。
大阪駅からJRで大津京まで普通に切符を買うと、片道970円。これが金券ショップで大阪ー京都間の昼特切符を買っていくと、380円+240円で行ける。
電車に乗る時はこういう地味な節約をしてるんだけど、とうとう昼特が来年9月発売終了になるので、再来年以降は京都より東はどうやって行くことになるかなーと電車に乗りながら薄ぼんやり考えていた。

「大津の都と白鳳寺院」展。
天智天皇の大津京の特別展と聞いたら、飛鳥好きとしては行かざるをえない。
見てて思ったんだけど、ここの展示はすごく繋がりがわかりやすい。遷都前の大津の様子がわかる遺跡が紹介され、同時期に都が置かれた飛鳥宮、難波宮が紹介され、大津遷都があって、誰もが知ってる壬申の乱へと、考古資料から時代を描き出していく。で、最後は天智天皇の血を引く桓武天皇が大津に建てた梵釈寺の話で終わる。
地域の歴史を日本史に結びつけて、興味が湧いて来るような導入がうまいというか。
この展示をここら辺の子が見たら、日本史が一気に身近に感じられるんじゃないかなー。
あと相変わらずキャプションのキャッチが面白い。誕生釈迦仏の並びも、ついつい食いつきたくなるんよな。

天智天皇発願の崇福寺。そのお寺の名前は今回やっと認識したけど、今はもうないそのお寺の旧仏が、園城寺の頭身が低い重文十一面観音だった(これは見たことあった)と知って、そうだったんだーとか。
瓦、金銅仏、塼仏、塑像断片などとにかく見応えがあった。
雪野寺跡の塑像の童子の頭部ってほんとに白鳳?と思うくらいリアルな造形で驚くけど、塑像片てすごいいっぱい見つかってるんだなーとか。御所市の二光寺廃寺と名張の夏見廃寺出土の塼仏がいっぱいあって、同型の塼仏があるというから地図で位置関係を見たり、西宮の黒川古文化研究所ってけっこう塼仏持ってるんだなーなんか興味ある展覧会の機会があったら行ってみようと思ったり。
橘寺の塼仏が美しくて、一気に飛鳥に気持ちがいってしまった。飛鳥行きたい。
石山寺の観音さんは痛々しくて見るとつらい。
妙伝寺の如意輪観音さんにも、阪大の金銅仏展以来の再会。ほぼ独り占めで、正直、この日京博でお会いしててもおかしくないよなーと思いつつじっくり拝見した。
考えてみれば今回見た資料はけっこう奈良国立博物館の2015年夏の「白鳳」展で見ているはずなんだけど、理解は今回の展示でより深まったと思う。ていうかこの知識を持ってもう1回「白鳳」展行きたいわ〜。

京阪別所駅から乗り換えつつ東山駅に行き、少し歩いて細見美術館へ。「末法」展。
カフェは何度か使ったことあるけど、実は中に入るの初めてだった。照明暗い。
末法の世に生まれた芸術をただその美によって鑑賞する。
心掴まれる美しさのものがいくつかあって、興福寺伝来井上馨旧蔵の弥勒菩薩とか、手のひらサイズの如意輪観音とか、工芸の極みみたいな光背とか…こりゃ快慶とかそういうクラスのお像を飾ってないと嘘でしょみたいな…魂抜かれそうになった。
頭部に牛頭がついてる牛頭天王坐像とかどこ伝来なんだろうなー。
あと意外に蔵王権現祭りでもあった。
それから応挙の驟雨江村図が見られたのが嬉しかったのと、金峰山伝来の優填王像のポーズが、あっこれ奈良博の走り大黒さん!というのが印象に残った。
地下のカフェで国宝展に臨む前の腹ごしらえをして、バスで移動する。座れたのでよかったけど、東大路通を南下する路線はひどく混んでいたので、おけいはんまで歩いた方がよかったかなーともちょっと思った。いやでも体力温存したかったのでまあよいのだ。

京都国立博物館「国宝」。入館の待ち時間はなかったが、中はほどほどに混んでいた。3階からまわる。
まあ何年かこつこつ博物館、美術館巡りしてると、けっこう見たことあるというものも多く、桜ヶ丘銅鐸を見ては結婚前に神戸市立博物館にデートで行ったなーとか、荒神谷遺跡はほんと衝撃的だったなーとか(最寄りの荘原駅で記念に取った乗車証明をまだ財布に入れてる)、福岡の新・奴国展ほんっとすごかったなーとか、一つ一つ見ては思い出が蘇ってくるって感じだった。
崇福寺の舎利容器がここで見られたのは、大津とハシゴしてよかったことだった。

4期にした決め手は唐招提寺の金亀舎利塔、大井戸喜左衛門、小野道風だったので、これらは特に丁寧に見てきた。
1階の仏像室には仁和寺の薬師如来がいらしてた。トーハクの仁和寺展にもお出ましになるらしいけど、多分日程が合わないので、今回はまたとない機会ということでここぞとばかりに間近で拝見してきた。素晴らしい檀像。

国宝ばかりが並んでいて、それなりに見ごたえはあるんだけど、しかしやっぱり展示にもうちょっと文脈がないと、展覧会としての面白みには欠けるかなーと贅沢なことを思いつつ帰宅。
京都は普段から常設が凄すぎるんだよな。
posted by すずる at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術館・博物館