2017年02月10日

SMOKEと神聖なる一族

今年はできるだけインプット多めにしようと、昨年よりは気持ち積極的に本や漫画を読んでいる。
映画も2本見てきた。

『SMOKE』 ウェイン・ワン監督/ポール・オースター脚本

モンキービジネスでポール・オースターを知って、最初に買って読んだのが『スモーク&ブルーインザフェイス』だった。そのときに「映画いいよ」と薦めてもらったんだけどずっと機会がなく、今回デジタルリマスター版がかかっていたので見てきた。
客がタバコ屋に入ると、主人は「いつもの」を出してお釣りを数える。最近の出来事やなんかを話しながらゆっくりと。そのやり取りで、その店にはちょっとした交流があるのが分かる。
妻をなくした小説家、家出少年、ヤク中の娘を連れ戻したい母親・・・・・・それぞれの人生にはそれぞれの重要な場面があって、おせっかいに介入するんじゃなく、隣人として立ち会う、そのおしつけがましくない距離感がいい。
言葉はなくゆっくりと煙が漂う場面に、そこにある複雑な感情を思う。
しみじみいい映画だったーと思った。ハーヴェイ・カイテル最高や。ほかにどんな映画に出てるのかなーと思ったら、『グランド・ブダペスト・ホテル』に出ていた。そういえばいたいた。


『神聖なる一族24人の娘たち』 アレクセイ・フェドルチェンコ監督
大阪でやってた時に見逃してしまったので、神戸の元町映画館まで行ってきた。
ロシア西部のヴォルガ川流域のマリ・エル共和国に住むマリ人は、ロシアに支配されていたもののロシア正教の布教が十分行われず、伝統的な自然崇拝が残っているらしい。
タイトル通り24人の娘(?)が1人ずつクローズアップされるオムニバスで、最初はおまじないとか雪の中の祭りとか撮った民俗学的なドキュメンタリなのかなーと思っていたら、そのうちしれっと人の中に精霊や死人が混ざり始めて、なんだろうこれ・・・・・・古今著聞集とかのちょっと不思議な話をそのまんま映像化したみたいな。
日本人としてはけっこう馴染みやすい世界でもあると感じた。

娘の体調不良の原因を知るためにパンや鵞鳥を捧げ物に持っていくとか、死んじゃったお父さんが村人に連れられて帰ってきて、なんか家で縦ノリで踊ってるとか、イケメンの死者を呼び出すいかがわしいパーティをしている娘たちに怒ったじじばばが箒や鋤なんかを持って駆けつけるとか、絵的に面白い場面がいろいろあって、フォークロアとちょっと不思議で面白い映画だった。ただ投げっぱなしな話もあり、あの娘やあの娘の安否が気になるとかがあるから、DVD出たら見て確認したい。
あーあとびっくりしたのは、昼食?で、オーブンで焼いた魚を手づかみで皿に盛って、パンをどーんと乗せて、あと付け合わせが生っぽいタマネギ半分だったやつ。
posted by すずる at 18:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2017年02月05日

1月に読んだ本

1月に読んだ本は5冊でした。

『冬の夜ひとりの旅人が』



大晦日から新年にかけて読んでいた。
イタロ・カルヴィーノの新刊冬の夜ひとりの旅人がは、結局読めなかった。いや読んだのか。
私はあなたであり、男性で、女性で、読者で、作者で、読んでたと思ったら自分が読まれていて、と思ったら書かれていた。
小説を読みかけては続きの気になるところで行く先をなくしてしまう、たぶんこういう実験的な作品が好きなんだろう、これはまさに私みたいなのが好きなやつだと思いつつも、読んでいる間は大変にもどかしい本だった。

『二人のウィリング』



シリーズ探偵役のウィリングがタバコ屋で男と出会うところから、最初の死体までの導入がめっちゃ面白い。
中盤は発端と比べると読んでてあまり起伏がないように感じたけど、真相が分かってみると世界が一変して、何げない描写だったのが、読み返したら全然違う感想になりそうと感じた。再読したときにより楽しめそう。


『舟を編む』



映画で見た『まほろ駅前〜』で気になってた三浦しをんをやっと初読み。
雲田はる子の漫画化が始まったので、それを読む前に原作を読んでおこうと思って。
で、すごく良かった。ちょうどOEDを作った人たちの話を読んだばかりというのもあるけど、辞書作りの世界にすんなり入れた。
特に西岡さん視点のところが良くて、時間もコストもかかる大きなプロジェクトとそれを達成するためにいるような人たち、辞書に名前を残す人たちを、自分とは違う、けれどと思いながら周辺から見ている人物。

『漱石入門』



今年は漱石生誕150周年なんだそう。グラフロの紀伊国屋に行ったら漱石特集のコーナーがあって、そこでふらっと買ってみた。
この著者の本を読むのは2冊目だけど、初心者向きに紹介してくれる単なる入門書じゃない。もっと読み方そのものが変わってしまうような、こんな深い読み方ができるんだって目からウロコがぽろぽろ落ちるような読書体験を与えてくれる。
なんかもうちょっと違うふさわしいタイトルがあると思うんだけど…。
「文化記号は、小説を風化させる作用と小説を生かし続ける作用の両面を持つ」
書かれた時代と背景を知ると、自分の中に作品を読む新しい視点が持てるということ。
ならば、文化記号を理解するに越したことはない、うん。
特に明治の家族制度のところが面白かった。

あと西澤保彦の『悪魔を憐れむ』読みました。タックシリーズ久しぶりすぎた。
posted by すずる at 23:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書メモ

2017年01月23日

京都国立博物館

日曜に京都国立博物館に行ってきた。
国立博物館の年間パスポートが今年の3月で終了というのは、毎年お世話になっているだけにけっこうショックなニュースだった。
まあなくなる分にはいいんだけど、4月から始まる新制度のメンバーズパスが、2000円で平常展示が何度でも見られるというもので、特別展とは別に平常展示だけを目当てに京都・奈良に4回以上行くかというと微妙(2016年は3回だった)
奈良博のプレミアムカードは5000円で奈良博の特別展が各2回見られるけど、春夏と2回ずつ+秋の正倉院展に行ってやっと、という価格設定は正直疑問。
セレブだったらこんなことで悩まずに賛助会員になるんだけど。
悩みつつ最後の年間パスポート作成。今年はこれでお世話になります。

京博は12月に若冲を見に行ったばかりだけど、その時はしまってた3階がオープンしていた。
陶器室は前はあの部屋だけで力を使い果たすくらいたっぷりつまってたのが、かなりすっきりした展示点数になっていた。
考古室では、印仏瓦経を初めて見た。仏像をスタンプしてその中に経文字が1字ずつ書かれているの。
「ふたつの遊行上人縁起絵」では、一遍聖絵とは異なる系統の宗俊本を、金蓮寺本と真光寺本で同じ場面を並べて比較して見ることができた。

中世絵画室は瀟湘八景図。相阿弥と狩野元信だと、元信の方が景色というか遠近がはっきりしていてたぶんいい景色なんだけど、なんかぼんやりした相阿弥の方が好きだなあ。
近世絵画室は富士山特集で、山雪の富士三保松原図の雄大なまさに富士山って感じの絵に、蕭白の異様な感じの絵に、応挙に原在中と豪華だった。
なんか原在中の細密な描写は参詣図のようで、応挙のもやっとした影で捉えた富士の方はリアルな富士山に感じられるのが、線のリアルさと見た時の印象が異なるというか…うまくいえないけど、そんなところが面白いと思った。

1階に降りると愛宕念仏寺の素晴らしい仁王像にご挨拶して、今回の主目的、修理された鳥取三佛寺の蔵王権現を見た。
一木造りで足を大きく上げていない、まだ蔵王権現のあのポーズが定型化する以前の姿ということで、正本尊よりも脇本尊の方が古いものらしい。
顔、衣、膝の木目がよく見えて、部位によって違う木目の幅と濃さがこれ以上ないってくらい合っていると思った。いつかは現地に行きたい三佛寺。
あとは泉涌寺特集をやっていて、三宝荒神像、楊貴妃観音、快慶の宝冠阿弥陀、護法神、逆手の阿弥陀などなどがいらしてて、素晴らしい仏像だらけでたまげた。

四条まで歩いて阪急で帰宅。
posted by すずる at 22:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術館・博物館

2017年01月21日

南極建築展

今年の展覧会始めは、LIXILギャラリーの「南極建築」展になりました。
観測基地の建築には制約があること…船が運べる資材以上のものは作れないから、船の大きさと建築に関係があるというのが、なるほどな〜と思いました。

最初の基地は木製のプレハブで、資材運搬に制限があるのもですが、南極の環境に耐える建物を、建築素人の観測隊員が短い期間で作るっていう、そういう制限のあるプロジェクトって大変でしょうが見てて燃えます。
ぐぐったら現物が97年の南極展で展示された記事がでてきた(白い大陸に挑んだ40年前の建築技術 竹中工務店

梱包用の箱を積んで作ったという、建物をつなぐ通路兼貯蔵棚の写真がアングラ感があってよかった。
南極観測隊から影響を受けて書かれたSFとかありそう。

印象に残ったのは…
基地では季節イベントが重要らしくて、中でも除夜の鐘は毎年新造する
断熱のために窓はつけたくなかったけど、隊員のどうしてもという希望でつけた
雪に埋もれた時用に天井に脱出口がある
南極では太陽の位置が低いので、太陽光パネルは屋上でなく壁面につける
船が新しくなるにつれて基地内もどんどん快適そうに

あとは氷床下のぜったい座りたくない洋式トイレの奥に積まれてるトイレットペーパーがスコッティで、これやっぱわざわざ選んでますよねみたいな…。

各国の基地の写真もあって、イギリスのハリーIV基地のモジュール移動テストとか映像に見入ったり、けっこう堪能しました。
知識を入れたので、映画の南極料理人をもう1回見たくなった。
posted by すずる at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術館・博物館

2017年01月19日

2016年に読んだ本

2016年に読んだ本、24冊でした。家族に「少なっ」と二度見された。
この数でベストとかいうのもなんですが、読んだ本はどれもこれも当たりだった気がする。

『ハザール事典』 ミロラド・パヴィチ
『冬の物語』 イサク・ディネセン
『日の名残り』 カズオ・イシグロ

あたりが特によかった。
『ハザール事典』にはかなり時間をかけた。
理解が及ばないとこもあったけど、見覚えのある人物の断片が出てくるたびにぞくぞくする興奮があった。すごくいっぱいメモしながら読んでた。
イサク・ディネセンを冬の終わりから春にかけて読んだのもすごいいい読書だった。
フォークロアっぽいけど、民話の登場人物みたいに枯れてない、それから話がどう転がっていくかいつでも未知数。
『日の名残り』はものすごく複雑な読後感だった。徹底して滑稽でもある、残酷なほど滑稽。悲しい。人生と思想を賭けて誇り高く勤めてきた人が、その人生に疑問を抱かざるを得ない状況が。それでいて記憶の中のミス・ケントンはいきいきしててかわいい。描かれる風景は美しかった。


以下は読んだ本を読んだ順に。
『文学会議』 セサル・アイラ
『最果てアーケード』 小川洋子
『注文の多い注文書』 小川洋子、クラフト・エヴィング商會
『ジェゼベルの死』 クリスチアナ・ブランド
『ブラバン』 津原泰水
『ハザール事典』 ミロラド・パヴィチ
『フィッシュストーリー』 伊坂幸太郎
『LOVE』 古川日出男
『冬の物語』 イサク・ディネセン
『日の名残り』 カズオ・イシグロ
『MONKEY vol.8』
『ハートブレイク・レストランふたたび』 松尾由美
『ジム・スマイリーの跳び蛙』 マーク・トウェイン
『MONKEY vol.9』
『拳闘士の休息』 トム・ジョーンズ
『静かな炎天』 若竹七海
『スペース金融道』 宮内悠介
『MONKEY vol.10』
『エスカルゴ兄弟』 津原泰水
『夜行』 森見登美彦
『博士と狂人』 サイモン・ウィンチェスター
『いまさら翼といわれても』 米澤穂信
『首折り男のための協奏曲』 伊坂幸太郎
『ヒッキーヒッキーシェイク』 津原泰水
posted by すずる at 22:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書メモ