2016年12月15日

2016年のMONKEY

今年もあまり読書してなかったけど、年3冊発行の『MONKEY』はかろうじてついていってます。



vol.8は東京国際文芸フェスティバルに合わせた「2016年の文学」特集。
巻頭のオルハン・パムクの「事物の無垢〈抄〉」は実際にオープンした自作の小説とリンクする博物館の図録みたいなもので、個人的な物語みたいな、70-80年代のイスタンブールの記録として民俗学的価値が出そうな、よその国の読者からみると異文化として面白くて、本読みで博物館スキーとしては2度おいしい。
『無垢の博物館』はいつか読もう。

特に刺激的だったのはイーユン・リー「小さな犠牲」。
ペットとして飼ってる豚が大きくなりすぎちゃって、大家から処分を迫られてる女性の話。っていうとなんかコメディっぽいな、全然そんなことなくて、語られるのは主に主人公とその母の関係。
母が娘に言った台詞として
「他人の人生で人が重みを持つとしたら、それは何を与えるかではなく、何を奪えるかだ」
こういうのが出てくるのが凄い。

猿からの質問は海外の作家に聞いた「自国の本で日本の読者に読んで欲しい本」と「日本の本で自国の読者に読んで欲しい本」が面白かった。
ロシアでいい翻訳家に恵まれて短歌や俳句が紹介されてるなんて初めて知った。

対談とかも面白かったけど、文芸フェスティバルには興味を持てなかった、ていうか…自分が現代作家の本を、ほんっとに、読んでないなーと改めて感じた。
読んでないとその場には行けないな、と。
これは原語で読む人と翻訳でしか読めない人の溝かもなあ。なんて言って単にコンプレックスが露呈しただけかもしれない。
ガイブン読みも極まればいつか原書でっていうのはあるよな。素晴らしい翻訳でたくさん新刊が出てるって環境に感謝はあれど。




vol.9は「短篇小説のつくり方」特集。メインはグレイス・ペイリー。初めて読んだ作家で、短篇もインタビューも凄く歯応えがあった。
「死せる言語で夢を見るもの」が特に好き。
主人公は老人ホームにいる両親に会いに行った女性。家族間の愛情は時として義務的に、時として滑稽な喜劇にも悲劇にもなる。
ありふれた家族の一コマでも組み立て次第で怖いことできるなあ。どこにも行き場がないイメージ、移民と老人ホームのそれが重なった時の破壊力はおそろしかった。
ばらばら寸前で踏みとどまる一家族の不幸が普遍性を持つ。
インタビューがほんとよかった。根っからの作家というか、物語の語り手としてのスタイルに憧れる。
ガチのフェミニストだけど作品にあまり主義主張っぽいのが表面に出てこないのは、女性に肯定的に共感していくスタイルにあるのかも。語り手よりもまず良い聞き手であるということ。
あとインタビューの中にあった、物語が元々あって、でもその物語の真相をただしく伝える語り方が分かるまでに時間がかかったという所が印象に残った。

他の短篇で印象に残ったのはムナ・ファドヒル。18年捕虜だった男が解放される話で、落ちもうまく決まってるけど、解放されることに半信半疑でとある行動をする、そこの描写、その切実さにちょっと涙出た。
あと、マシュー・シャープはラストの1文が、混乱と悲しさと未知の何かへの期待とが入り混ざって複雑でなおかつロマンティックで、なんていうか、こんな文が出てくるということに嫉妬した。
この号は読み応えがあった。




vol.10は「映画を夢みて」特集。
ポール・オースターは少年が見た映画の筋をたどる話。もしかしたらB級SFなのかもしれないけど、少年が大きな影響を受けたのがよく分かる。少年の全てを変えてしまう力を持つもの。
映画のあらすじを丁寧に語ってるのが、ちゃんと小説になってるのがすごいと思った。
カズオ・イシグロのドラマ脚本もかなり奇妙な話で良かった。どっちもイメージ喚起力が強かった。

西川美和のインタビューは映画監督として、作家として物語の描き方がどう違うかとか、面白かった。
映画監督はスタッフを背負う責任があるということ、あと打ちのめされるような映画だったらほんとぐうの音も出ないようなものを…のくだりが良かった。

映画ってそういうところがある。
posted by すずる at 23:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書

2016年12月14日

夜行

森見登美彦の『夜行』を読んだ。

鞍馬の火祭りの夜、宿に集まった仲間がそれぞれ語る、列車と奇妙な銅版画にまつわる話。
10年前に消えた女の子の、消失の謎にだんだんアプローチしていく話なのかな〜と思いつつ読み始めたけど、語られていくのは語り手個人の身に起きた奇妙な出来事で、すっきりするというよりは次第にもやもやが積み重なっていく。
茫漠とした列車の旅の行き着く先は奇妙な絵画の中の閉じた世界だったような、閉じ込められたと思ったらその闇はもっと広い場所に繋がっていたような、時間も空間も此方と彼方もくるくるひっくり返るような。

いい怖い話でした。津軽と天竜峡が特に好き。
久しぶりに肌が粟立つ感じを味わった。


posted by すずる at 23:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書

2016年12月03日

自転車操業

美容院に行ってきた。
最近いいことないから、なんか面白い話してくださいよー、最近めっちゃ笑った話とか。
って担当の美容師さんに無茶振りしたら、うーんと考えて、「そう言えば最近心から笑ったことってないすわー」とコミュ強でリア充っぽい美容師さんでもそんな顔するんだなというような遠い目をしていた。

最近いいことないと書いたけど、本当はいいことあった。ボーナスが出ていた、夏並みに。
先々月から財布のやりくりが自転車操業だったので、一息つけた感じ。
本当にやばかったというわけではなく、我が家は天引きで貯金した残りで生活費と遊興費と旅行代とやりくりしていて、今まではそれでなんとかなっていたけど、今年は出費がかさんで現金がぎりぎりだった。
一応貯金はできてるはず…でも財布の中にも口座にもお金ないから実感として金がない、っていう。

貯金の半分はネット銀行で定期にしていて利率がほどほどの時に始めたからできれば解約したくなく、毎月してる積立は財形ですぐにおろせるものじゃなくて、残りは株式と投資信託で処分するにはタイミングがいまいち良くなく……といった感じで、本当に必要なら解約しておろせるけど、なんとかなるなら手をつけたくないなーという感じで、しばらくちまちま節約していた。
ボーナスのおかげでとりあえず今年度の収支はプラスでいけそうだ。

貯金はした方がいい、多分いいんだけど、貯金で達成感が得られる方じゃないし、絶対これだけ貯めたいみたいな具体的な目標もないから、あんまりがちがちに節約生活する気にもならないし、かといってちょっと贅沢したいといってもきりがないし、うーん、庶民らしくそこそこに生活して、ほどほどに貯金してなんとか収支プラスでやってるのを褒められたいのかもな。
学生の頃も卒業して実家にいた頃も生活費は親まかせで適当にやっていた身としては、案外うまくやってるんじゃないかと思いたい。

しかしあまりお金のことばかり考えて生活するのはよくない。

夜歩いていたら、月と金星がきれいに見えた。
posted by すずる at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 日常

2016年12月02日

ペルソナ5

今年はポケモンとペルソナが20周年らしい。
ポケモンはやってなくて家庭教師のバイトをしてた頃に生徒達の間ではやってたなーくらいの記憶だけど、ペルソナは2罪からリアルタイムでやってるので、新作のペルソナ5もPS3でプレイした。
始めてから思い出したけど、私、ゲーム始めると夢中になって廃プレイしちゃう方でしたわ…。
でもさすがにもうゲームで徹夜とかはできない。ていうかダンジョンに潜っててリアルMPが削られていくのが体感できた。

ペルソナ2罪をやってから17年も経ってるし、もういい年になってて楽しめるかな?というか、自分がもう対象年齢外になっちゃってるんじゃないかなーとか思いながら5を始めましたが、杞憂でした。夢中になってやれた。
陥れられて前科持ちになり保護観察下となった主人公。居場所のない閉塞感の中始まり、次第に「取引」で繋がった相手の信頼を得て世界が広がっていく。
特に日々を過ごすのに人間関係を深めるコープとそれをすすめるために必要な人間パラメータを上げていくのがタイトで、半日も無駄にしないように仲間と過ごし、こつこつ自分を磨き、とりあえず1周めクリアするのにおよそ100時間。けっこうなボリューム。

話もネタバレになりそうなので詳しく言えませんが、怪盗団が支持されてきて、調子に乗った仲間がうかつなことしないかはらはらしたり、怪盗団のやってることは正義なのかどうかとか、いろいろ考えさせられたり…仲間のことは最初はけっこう引いた目で見ていたのですが、最後は頼りになる奴らだなーと見る目が変わりました。

とりあえず2周めの修学旅行イベントまでやって見たいものは見られたのでここまで。
高校卒業したら川上先生と結婚する。いやなんか幸薄い年上のひとに弱いなんて性癖が自分にあるとは思わなかった。
posted by すずる at 23:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 日常

2016年11月30日

拳闘士の休息

15年前の今頃の日記をふと読んだら、「そろそろ、お肌にも、生き方にも、責任を持つべき年齢だ。」って書いてたけど、お肌にも生き方にも責任を持たないまま余裕で今に至るよ。

11月は毎年どうも落ち込みやすく不調で、寒さのせいかなんなのか久しぶりにめまいと耳鳴りも戻ってきちゃったし、でももうイソバイドシロップは二度と摂取したくないのでなんとか自分をごまかしている。
なんとなく今日思ったのは、向こう10年は経験に費やしていこうと思った。いい物を買って所有するよりも、外に出かけて旅行してなんかを見て、食べて、そういうことにお金使おうと。そっちの方がいい。

トム・ジョーンズの『拳闘士の休息』を読んだ。短編集。この前に読んだ同じ作家の短編集『コールド・スナップ』が強烈に印象に残ってたので、どうしても較べてしまう。こっちの方が生の声という感じはする。こなれてなくて、でも作者の生の声に近いような。でも『コールド・スナップ』にあったような一瞬の真理に到達したみたいな閃きはない。
肉体的な痛み。神に祈るとするならば「後頭部に一撃で楽に死ねますように」。苦しみ抜いて死ぬのはそりゃ嫌だ。登場人物はみんな窓のない部屋にいるようで、気分がけっこう引きずられた。
安心と信頼の訳者さんだけど、『コールド・スナップ』を先に読んでしまったら文章にちょっと物足りなさを感じた。整っているというか。
posted by すずる at 23:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書